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妻の大変さ、そして貯金を切り崩しても足りない費用 男の妊活座談会《後編》

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デリケートな問題だけに、なかなかオープンにできない「妊活」の話題。

前編では、触診・採精など男性の不妊検査について、またXデイ(奥様の排卵日)についてお話いただきました。

後編となる今回は、夫婦関係について、気になる費用について、これから子どもを持つ方へのメッセージなど盛りだくさんの内容でお送りします!

-Profile-

Aさん 43歳 約6年間不妊治療を行い、体外受精で第二子を授かるも第三子は成功せず。高齢になったこともあり不妊治療にピリオドを打つ。

Bさん 33歳 結婚3年目から約2年間不妊治療を受ける。「成功率5%」と診断された2回目の体外受精で第一子を授かる。今は第二子を検討中。

Cさん 36歳 結婚後3年間不妊治療を受け、体外受精で第一子を授かる。「6時間待ちもザラ」という超有名クリニックに通院した経験あり。

 

全身麻酔や筋肉注射も…大変なのはやっぱり妻のほう 

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Aさん:不妊治療とは言うけれど、男は採精がメインで、基本的に痛い思いはしないじゃない?クリニックに毎日足を運ぶわけではないし。ぶっちゃけ、精子を採るときに提供できればいいし、場合によっては濃度を濃くしたりとかもできるわけで。やっぱり苦しいのは妻だよね。採卵のときなんて毎日病院に通うことになるし、治療にかかる時間と深さが男性と全然違うもん。ウチの妻は働いているので通院のスケジュール調整が大変で、本当にしんどかったと思う。

 

Cさん:実際、女性のほうが負担は大きいかもしれないですね。妻は卵管造影検査の後、めちゃくちゃ痛かったと言っていました。こっちはなかなか出ないという悩みはありつつも、出すだけなので。女性のほうは大変ですよね。

 

Aさん:全身麻酔をしたり、筋肉注射をしたりとかね。あんなに痛そうなのをさ…。

 

Cさん:妻のケアも必要ですよね。35歳を超えるといわゆる「丸高(まるこう)」になるので、焦りもあったと思います。で、またできない、またできないってことが続くとナーバスにあるじゃないですか。ちょっとやそっとの励ましの言葉は届かないし、逆効果になることもあります。「ダメだったら二人で一緒に楽しく過ごそうよ」と気休めを言って、「私は子どもがほしいの!」と怒らせてしまったりして。

女性にしか分からないことがあるんだなぁって痛感しました。いつも妻に気は遣っていましたけれど、治療中の心の支えになれていたかというと疑問だなぁ。

 

Aさん:まあ、実際に女性にしか分からないことだから。「分かるよ」って言ってあげたいけれど、そうは言えない。そのもどかしさってのはあるよね。

 

Bさん:僕は、何があってもとにかく「焦らず頑張ろうよ」というスタンスでやってきました。僕の友達や嫁の友達が結婚しだして、子どもができてってなると、「ウチはまだだね」ってなっちゃうこともありますよね。そんなときは「ウチはウチじゃないの?」って言ってあげる。元気がないときにはお菓子やケーキを買って帰ったりしていましたね。モノで釣るわけじゃないですけど、ちょっとしたご褒美で気分を盛り上げるとか、そういう配慮はしていました。

体外受精をしていて、受精卵を戻した日は安静にしていないといけないから、「なんもしなくていいよ」って言って、掃除や洗濯など家のことを全部僕がやっていたこともあります。そういう日常的なところで、できることはやっていましたね。あとは、周期の近くではないときは、思い切って遊びに出かけるとか。ある程度割り切って、オン・オフをはっきりしたほうがいいのかなと。

 

Aさん:やっぱり、頭のなかでいろんなことが堂々巡りをして悪くなっちゃうことってあると思うんだよね。考えすぎてもどうしようもなかったりするじゃない?夫婦で気分転換したほうが結果として良くなるかもしれない。

 

Bさん:もったいないけど、排卵の周期にこだわりすぎないようにもしていました。「今回はもう、いいよね?」って提案するんです。妊活のことばかり考えていたら疲れちゃうじゃないですか。ブルーにならないように、妻の負担を軽減したいっていうのはずっと考えていましたね。

 

Aさん:不妊治療中は、妻の気持ちに共感することと、なんかあってもこっちは動じず「大丈夫だよ」って言えるスタンス、その両方があるといいかもしれないね。

 

子どもがほしいなら、できるだけ早く夫婦で検査をしたほうがいいと思う

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Bさん:自分から話さない限り、会社の同僚とか上司は、僕が不妊治療をしていることなんて知らないじゃないですか。会社の飲み会で偉い人が「そういえば、Bは結婚してどのくらいになるの?子どもはまだ?」とか無邪気に聞いてきたりしていたんですよ。あとは事情を知らない親戚にも「子どもは?」って聞かれることがありました。そこは笑って「うん、まだだね」と受け流したり…。

 

Aさん:そういう瞬間、みんな体験しているだろうね。

 

Bさん:あとは自分が妊活をするようになってから、周りを見る目が変わりました。ご近所で子どもがいない夫婦とかみると、どうしているのかなって気になりますよね。前だったら、「お子さんはまだですか?」って聞いてしまっていたかもしれない。今は絶対にないですけれど。そんな感じで、子どもに対して敏感にはなっていますね。もし、子どもができずに悩んでいるご夫婦がいて、そのことをオープンにしてくれたら、自分たちの経験とか話してあげたい。

 

Aさん:そう、聞かれたら話してあげたいよね。

 

Bさん:友達の結婚式とかで久々に会うと、「子どもができた」「ウチはまだできない」という話になるじゃないですか。僕が結婚してしばらく子どもができなかった話をすると、女友達が「えー、何か特別なことをしたの?」と聞いてくるんですよね。そうやって聞かれたら話すようにしています。

 

自分の体験を話すとき必ず言うのが、「今のうちから卵子とか精子を調べたほうがいいよ。子どもがほしいときに『あれ?なかなかできないね』って気づいてから考えるようだと、時間がかかってしまうから。今なにか問題があると分かれば、なにか対応できるかもしれないよ」っていうこと。ウチも早くから分かっていれば、子どもを授かるまでの時間がもっと短くてすんだかもしれない。もちろん、これは良い悪いの問題ではないのだけれど。

僕は今33歳なんですけれど、同級生がこれから結婚して子どもをつくるとなったら、スムーズにいくとは限らないわけじゃないですか。やっぱり35歳っていうラインを超えてくると思うので。

 

Aさん:そうだよねぇ…。いつ子どもがほしいか、逆算して考えたほうがいいよね。ある程度ゆとりのあるスケジュールでね。

 

Bさん:だから、そういう友達に言ってあげたいですよね。早くから考えておいて損はないと思うから。

 

妊娠のメカニズムは全ての男性が知っておくべき

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Cさん:世間的には、子どもは簡単にできるって思っている人、多いと思うんです。「授かり婚」が話題になったりしているから、僕も誤解していた部分があったんですよね。極端に言えば「出せばできるんだ」くらいの認識でした。タイミング法を始めるあたりで、排卵とか着床とか分かるようになりましたけど。そういう意味では、不妊治療を経て妊娠のメカニズムを語れるようになりました。

 

Bさん:たしかに、僕も最初は生理くらいしか分からなかったですね。周期で言えば、生理の反対が排卵じゃないですか。そういうのを全然知らなかったです。治療を始めたころ、夫婦の会話で知識を蓄積していきながら、分からないことをネットで調べて理解していきました。

自分で調べることってかなり重要で、前提の知識がないと妻と不妊について話せないんですよね。妻は一生懸命調べているのに、自分が分からないままにしていたら、「旦那は何も分かってくれない!」みたいになっていたと思います。

 

Aさん:不妊治療っていうと、女性の問題と捉えられがちじゃない?だから、男性の場合は自分から情報を取りに行かないと分からないままになっちゃうと思う。そうなると、妻が悩みを一人で抱えてしまうことになる。やっぱり情報を集めて、妻と対等に話ができるようにならないとダメだよね。「その情報を鵜呑みにしちゃうのはよくないかもね」とか客観的に意見したりできないと、一人で悩んでいる妻が変な方向に行っちゃう可能性もあるし。

 

Bさん:ちゃんと話せるっていうのは大事ですよね。あるときふと妻が「あなたに相談してよかった」と泣きだしたことがあるんですよ。「本当は相談するか迷ってたんだよ」って言っていたんです。誰にも相談できずに苦しんでいる時期が、あったんだなって思いました。僕が無関心だったら、相談してもらえなかったかもしれない。

 

Cさん:不妊で悩んでいる夫婦はもちろん、妊娠のメカニズムについては、全ての男性が知っておいたほうがいいですよね。子どもをつくるっていうのは、二人の問題なんだから。

貯金を切り崩しても足りない…お金の問題は大きいです

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Cさん:タイミング法や人工授精をしているときはまだいいとして、体外受精までくると費用がかなりかかりますよね。助成金を差っ引いてもかなり苦しくて、ウチは2年間で200万円くらい。貯金を切り崩して、費用をねん出するしかありませんでした。それでも足りなかったので、両親にも援助してもらったんですよね。

 

Aさん:治療の費用もクリニックによって違うし、ちょっとグレーなところがなかった?事前に費用を知らされてなくて、会計のときに「え、こんなにかかったの?」と驚いたことが何度かあったなぁ。

 

Bさん:クリニックによって違うんですよね。

 

Aさん:そう、病院によって違うし、いくらかかりますっていう説明は一応あるんだけど、その途中にちょこちょこ出費があったりして、なんやかんやでお金が出ていくの。ウチなんて親の介護と重なってピーク時は1年で200万円かかった年もあって、大変だった。

 

Bさん:お金はかかりますよねー。とくに体外受精は。僕らが通っていたクリニックは比較的費用が安くて、体外受精で35万円だったけど、高いところだと50万円とか60万円くらいするじゃないですか。

 

Cさん:でも、35万円で安いって言っても、35万円ですからね。大きな金額ですよね。みなさん不妊治療をしていることを大っぴらにしないだけで、実は悩んでいる夫婦はたくさんいるじゃないですか。これだけ少子化で騒がれているのだから、保険適用も考えてほしいですよね。お金がネックで不妊治療に踏み込めない人もいると思うんですよ。

 

Aさん:助成金があるのはありがたいけれど、行政によって条件が違うんだよね。年齢や回数に制限もあるし。ほかにも、卵管の治療は保険適用じゃなかったり、腫瘍摘出は保険適用だったり、その場に行ってみないと分からないこともあったなぁ。

 

それでようやく子どもを授かっても、今度は出産に何十万っていうお金がかかるわけで。そりゃ、もちろん嬉しいことなんだけどさ、金銭的には苦しいよねぇ。

 

30代前半のタブーが、40代では話し合うべきことになる

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Bさん:不妊治療中はおたがい繊細になっているじゃないですか。ちょっとした一言が夫婦関係に亀裂を入れかねないこともあると思う。たとえば僕は、諦めの言葉はNGじゃないかって思うんです。「もうやめよっか」とか「どうせダメでしょ」みたいな言葉ですね。妻にそれを言ったら、「私がこんなに頑張っているのに!」と思うでしょうから。

 

Aさん:それはわかるけど、年齢にもよると思うなー。なんでかっていうと、40代の場合は、不妊治療を続けても成功率は落ちる一方だし、どこまでやるのかっていう点をしっかり話し合わないといけないタイミングがくると思うから。お金の問題だったり、年齢の問題だったり。年齢や回数がある程度いくと助成金も下りなくなるし。次の人生のライフステージを考えなくちゃいけないこともあると思うんだよね。その話をするときの温度感っていうのがね、夫婦で違っちゃうと話が噛みあわないかもしれないんだけど。

 

そのときの気持ちの状況によっても違うじゃない?「頑張ろう」ってときもあれば、「いつまでも続けていられないな」と感じるときもあるはず。その辺の気持ちをくみ取って、上手にコミュニケーションをとったうえで、ソフトランディングできるように男性がリードしてあげたほうがいいのかなと。というのも、僕の周りにもいるのよ。コストをかけた分、諦めきれないっていうご夫婦が。

 

Cさん:あー、その夫婦の気持ちも分かるなー。

 

Aさん:とはいえ、歳を重ねると妊娠の確率は落ちていくわけで…。そこがきっと、30代と40代の違いかもしれない。ウチの場合はお互いに40歳を超えているので、受精卵を着床させるところまで頑張って、ダメだったらそこでまた考えようっていう話をして。それで結局、不妊治療にピリオドを打ったんだけど。

 

でもね、次の展開として里親になることを考えてて。近くに児童相談所があって、塀の外から中の子どもたちを見て感じるものがあるんだよねぇ…。週末の里親くらいならなってあげられるんじゃなかなぁって、今、考えているところ。

 

うんちのときのおむつ交換は、嫌なことではなくむしろチャンス

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Bさん:不妊治療をしていると、せっかく妊娠しても、お腹から子どもが出てくるまで安心できないじゃないですか。生まれてきてくれたことに本当に感謝しています。今は二人目を考えていますけど、自分の体のために、タバコをスパッとやめたり、お酒を控えたりしているんです。悪影響が出るのはわかっているので。身体にいいかどうか分からないですけど、毎日サラダを食べるようにもしていますね。

 

Aさん:やっぱり不妊治療から夫婦で足並みそろえてやっていると、子どもに対する愛情も大きくなるよね。

 

Bさん:自然とイクメンみたいな感じになりますよね。

 

Aさん:そう。不妊治療を経て家族関係は、すごく豊かになる。だから男性も、妻に任せっきりじゃなくて、一緒に不妊治療に取り組むといいよね。普通に子どもを仕込んだときは、「やった、赤ちゃんがお腹から出てきた」みたいな感覚で終わりだけど、不妊治療だと「わー!顕微鏡でみたあの子がこんなに大きくなって!」って思うじゃない。これってもう、全然違うもん。

 

Bさん:本当にゼロから見てきていますからね。受精卵が細胞分裂をしているところ見ていますから、エコーで初めて見るお父さんとは違いますよ。

 

Aさん:だから不妊治療があったからこそ、一般の家庭よりも絆が深まるっていうのは絶対にあると思う。

 

Bさん:ウチの子はすぐ「パパ、パパ」って寄ってくるんですけど、同年代の友達がそれを見ると「Bさんのところは、すごいパパっ子だねー」っていうんです。普通の家庭とはちょっと違うのかなって思いました。

 

聞く話によると「うんちのときはおむつ交換をしないパパ」がいるらしいんですけど、ちょっと理解できないですよね。うんちは子どもの体調や成長を知るチャンスなのに。不妊治療を経験したパパなら、「うんちはいや」なんて言わないはずですよ。

 

Cさん:個人的には、苦労して子どもを授かったのに、「子どもがいて当たり前」になってしまっていたことに気づきました。今回の座談会を通じて、いろんなことを思い出せてよかったです。

 

それと、私たち夫婦は初めて病院に行ったときに、「不妊に悩んでいるのは自分たちだけじゃないんだ」って勇気づけられたんです。行くまでは遠い印象でしたけど、同じ悩みを持つ人がこんなにたくさんいるんだって感じたんですよね。

それと同じように、この座談会の記事を読んで少しでも元気になってくれる人がいたら嬉しいです。今日は本当にありがとうございました。

 

Bさん:ありがとうございました!僕も今日はいろいろと語り尽くせました。

 

Aさん:僕も同じ思いをした人たちと話せてよかった。またお願いします。

 

<<前編はこちら>>

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