私が通っていた産院は、基本的に母乳育児を推奨していました。
母親学級でも妊娠中からのおっぱいケアの話があり、妊婦健診でも助産師さんによるおっぱいチェックやマッサージのアドバイスがありました。
通院するうちに自然と、できるだけ母乳で育てたいと思うようになっていきました。
妊娠週数が進むにつれ、育児書やサイトで母乳についても調べるようになりました。
よくある悩みやトラブルとして、初産だと産後すぐには母乳が出ないことが多い、赤ちゃんがうまく飲めないうちはおっぱいが張りすぎて痛い、乳首が切れて痛いといった話を目にしました。
なるほどそういうものかと思っていました。
出産後、分娩台の上で初回授乳をした際、想像以上の娘の吸う力に「確かにこれは痛くなりそうだ」と覚悟しました。
入院は個室での母子同室。
出産当日の夜は娘を新生児室に預かってもらいましたが、翌日からは昼夜問わない頻回授乳のはじまりでした。
授乳を繰り返しているうちに、ざわざわとした不安感や焦燥感のような動悸を感じるようになりました。
はじめは「もうマタニティブルー!?」と思い、今後の育児に不安を抱きましたが、そのうちどうも授乳中のみの症状のようだと気づきました。
授乳中のみ不安感のような動悸を感じるなんて、そんな話は聞いたことがないと思い、手元にあったスマホでひたすら調べました。
しかし、言及しているサイトがほとんどなく、理由はわかりませんでした。
助産師さんに相談したところ、ホルモンや血流の関係でたまにそういう人がいる、とのことでした。
どうやら少数派になってしまったようです。
どうりで情報がないわけです。
入院中は母乳の出が十分でなく、短時間のうちに何回も授乳を求められます。
授乳のたびにざわざわとした不快感に襲われなくてはなりません。
覚悟していたはずの乳首の痛みも不快感に輪をかけ、あまりのつらさに真夜中に娘とともに泣きました。
少しでも授乳回数を減らそうと、母乳の出をよくする方法もひたすら調べました。
退院後も症状は続きました。
区の保健師さんの産後訪問でも、一ヶ月健診の助産師さんとの面談でも、「そういう方、たまにいるんです」と言われ、吸われる刺激自体が症状の引き金だから対策がないと言われました。
あまりにつらいならミルクにすることも提案されましたが、この頃には十分母乳が出ていたこともあり、ミルクにしてしまうのは自分勝手なわがままのような気がして母乳を続けることにしました。
現在娘は三ヶ月。
ざわざわした動悸はなくなりません。
私のほうが慣れた…というより諦めた、という感じです。
さらに想定外だったのは、授乳によって食べても食べても追いつかないくらいの勢いで痩せてしまい、体力がいつまでも回復しないままになってしまったことでした。
体調によっては動悸に加えて頭痛やめまいなども起こるようになりました。
助産師さんのアドバイスでカロリーの高いものをうまく取り入れるようにしてから、痩せ続けるのは何とか止まりましたが、まさかこんなに痩せるものだと思っていませんでした。
このまま母乳を続けるかは様子見が必要だと感じています。
この件で何よりつらかったのは、私にとって授乳時間が苦痛でしかなくなったことでした。
一生懸命おっぱいを飲んでいる娘は本当にかわいいのですが、それ以上に動悸などが不快で、早く終われとしか思えません。
多くの育児書、育児サイトで見かけた「授乳するとオキシトシンが出て幸せを感じる、母性が育まれる」といった話がとても信じられませんでした。
「授乳はママと赤ちゃんの幸せな時間」という記述を見るたびに、悲しみとも苛立ちともつかない気持ちに襲われました。
しかし、掲示板などを見ると同じような経験をされている方が案外いることがわかりました。
皆さん自分がおかしいのではないか、母親失格なのではないかと悩んでおられました。
もしかしたら誰にも言えないだけで、同じような症状のある人は結構いるのかもしれません。
もし同じように授乳が不快でつらい思いをされている方がいらしたら、この話を読んで、自分だけではない、自分がおかしいのではない、と知っていただけたらと思います。
著者:nona
専門分野でバリバリキャリアを積みたい性分のため、育休という長期休職に不安と焦りを抱かずにいられない。その一方で娘の目覚ましい成長が楽しくてたまらない。そんな日々を送っています。
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