わが家に赤ちゃんを迎える準備として、オムツだのベビー服だのいろいろなものを買ってきた。
そして臨月を過ぎた頃、人生最大ともいえるかもしれないでかい買い物をする。
家である。
もともと夫婦2人で住んでいた家は、国道沿いでパトカーや救急車、消防車がよく通るし、トラックなどの騒音や排ガスがひどく、真ん前の深夜までやってるレンタルビデオ店がヤンキーのたまり場になってたりして夜中も暴走族なんかのパラリラパラリラがにぎやかなところだった。まわりはワンルームマンションが多くてご近所付き合いも希薄。買い物や交通の便はよかったんですが、子どもを育てるのにはあまりいい環境ではないと考えていたのでした。
赤ちゃんが産まれてからの事を考えて、安定期になってから土地なり家付きの物件なりをいろいろ見て回っていたのだけれど、なにしろ大きな買い物、「とりあえず買ってみよっか」とはいかない。どれも今ひとつ決め手に欠け、購入までに至らなかった。
「こんなんしてたら決まらないまま産まれちゃうんじゃないか」と思い始めた頃、巡り合わせというのはあるもので、旦那がとても気に入って、現地に見に行った翌日には「買っちゃお」と決めてしまう物件に出会うことができた。
築20年のその家は丘の一番高いところに建っていて、まわりは自然でいっぱいだった。というか自然以外なんもなかった。すぐ裏が自然公園、というか山。周囲をぐるりと山に囲まれている。白い壁と赤い屋根で、背景の緑と相まって、『となりのトトロ』に出てくるサツキとメイの家(「ボロ」って言われる洋館の方)に似てる、と思った。裏山は子どもとの散歩に最適だし、春には庭でお花見ができるし、夏には2階の窓から花火大会の花火が見えるとか。
なによりとても静かなのが魅力的でした。ちゃんと鳥の鳴き声が聞こえる、木々の風に揺れる音がさわさわ聞こえる。後に住んでから思ったのですが、夜、本当に静かだと「シーン」っていう音が聞こえる感じがするんですね。「騒々しい夜」に慣れていたので、住み始めの頃は“静かすぎて”なかなか寝付けなかったりしました。
夏だったのでセミもいっぱい鳴いていましたが、それも耳障りではありませんでした。騒音の中のセミの声はうるさいだけだったけど、自然の中では同じボリュームでもそのまま音が空になじんでいくようで、ミンミン聞こえててもやっぱり「静かだな」と感じました。
サクッと仮契約を済ませ、しばらくしたら私はお産に備えて実家に帰り、そのまま産後1か月ほど滞在するので、里帰りの間に引っ越し完了して赤ちゃんと帰るのはもう新しい家、という予定。元の家を最後にキレイにしてあげようとかはあまり思わず、引っ越しが決まってからはろくに掃除もしないで「近所のペット学校の犬がのべつ吠えてるのを聞くのもあと少しの間だな」と思いながら自分の分の荷造りを進めるのでした。
今思うと、臨月に引っ越しってさぁ…大変じゃん…。
ゼクシィBaby WEB MAGAZINEの記事
著者:前川さなえ
年齢:35歳
子どもの年齢:9歳と6歳
2003年結婚と同時にフリーのイラストレーターに。 長男妊娠時、お腹が日々大きくなっていくのがうれしくて ブログを始め、現在も奮闘真っ只中の育児ネタを発信!
ブログ/ぷにんぷ妊婦~育児編~
書籍/「ぷにんぷにんぷ」(幻冬舎)、ぷにんぷかあさん(マイナビ)、5歳だって女。(KADOKAWA)
※プロフィール情報は記事掲載時点の情報です。