妊娠初期に突然の腰痛に見舞われた私でしたが、腰痛がおさまったらつわりが始まりました。
なぜ、私がマカロニサラダを…?
つわりの症状は人により様々ですが、私の場合は、常に二日酔いか車酔いのような軽い吐き気があり、普通の食事ができず、嗅覚が異常に鋭くなり、よだれがめっちゃ出る、というタイプのやつでした。
それまで、つわりあるあるとして「炊きたてのご飯の匂いがダメ」とか「酸っぱいものが食べたくなる」とか、そういうのは聞いたことがあったんですけど、実際には炊きたてのご飯の匂いどころか、魚の匂いも肉の匂いもニンニクの匂いもダメ、隣の家の洗濯物から漂ってくる柔軟剤の匂いもダメ、電車の中の匂いもダメ。
とにかく生きてるだけで気持ち悪い!!!
食べ物もほとんどのものは食べられないのですが、突然「あっ、マカロニサラダが食べたい!!!」と天啓のように思いついたりして。
それまで好きでもなんでもなく、わざわざ作ることもなかったマカロニサラダを作り食べたりするのです。
その他、ポテトサラダとかホワイトシチューとか、ポテトサラダが挟まったサンドイッチとか、それからフライドポテトやふかしたジャガイモを食べたくなることが多くて、そういうものをよく食べていました、いま思い返しても、なんであの時あんなにマカロニサラダを食べていたのか全くわかりません。
マカロニサラダも食べたくて食べているわけですが、本当はもともと好きな餃子とかトムヤムクンとかガーリックのきいたスパゲッティとかが食べたい。
食べたいが気持ち悪くて食べられない。このまま一生ニンニクが食べられないのだろうか、気晴らしに大好きなインターネットを見ると、人間たちが連日美味しそうな料理の写真をアップしており、「くっそー、今に見ておれ……!」と憎々しい気持ちにしかならない。好きなものを自由に食べられないことはさみしいものだな、と痛感しました。
妊娠期限定で発揮された臭覚のポテンシャル
ご飯が普通に食べられないことも辛かったのですが、それよりも驚いたのは臭覚の発達です。とにかくこれまで気づかなかったような匂いが嗅ぎ分けられるようになりました。
例えば、職場で誰かと話したときに、「あーこの人昨日ニンニクが入った揚げ物をつまみに酒をしこたま飲んだんだろうな」などということが手に取るようにわかるのです。
昔、中島らもの小説で、”調香師の女が嗅覚が鋭敏過ぎて他人がどんなものを食べたのか口臭でわかる”という話があったのですが、自分の凡庸な嗅覚が、妊娠によりこれほどまでのポテンシャルを発揮するとは思わなかったので、気持ち悪くて死にそうになりながらも感心していました。
なにしろ、東京メトロ地下鉄半蔵門線と地下鉄東西線では車両の匂いが違うんですよ。
毎日乗っている通勤電車なのに、つわりになるまで電車内に匂いがあることすら感じていなかった。半蔵門線はそんなに気になる匂いではなかったけど、東西線はその日の天候や車両に関わらず雨降りのときに電車内にありがちな匂いがいつでも感じられて、より苦手な感じでした。
いま思うと色んな電車に乗ってどの電車がどういう匂いか嗅ぎ分けてみればよかったと思います、他にもいろいろな匂いを発見していたのではないかと思うのですが、鋭敏な嗅覚もつわりの終了と共に失われ、元通り電車の匂いも気にならなくなりました。
今となっては、東西線がどんな電車よりも一番臭かったことしか覚えていないということに悔いを感じています……!