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「母乳?」って聞かれるあの会話の奥にある、おばちゃんたちの過去の記憶 byイシゲスズコ

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こんにちは、イシゲスズコです。

 

今日は産後によく出てくる話題のひとつ、「母乳?」ってきかれるあの会話の謎について。

 

「母乳?」

産後に赤ちゃんを連れて歩いていると見知らぬ人やそう親しくない人からも声をかけられる、ってよくあると思います。

年配の方から声をかけられたときによくあるのが、「あら赤ちゃん〜」「かわいいわね〜」なんかの無難な声かけに続く、

「母乳?」

日常会話の中で「母乳」なんてそうそう出てこないんだけれどもおばさまたちの口からはホイホイ出てくるんですよね…。

「母乳?」

正直うんざり、なのだけど

最初の子である長男が生まれてからお祝いに来てくれる親戚のおばちゃんたちや連れ歩いてるところで出くわす近所のおばさま方、会う人会う人、挨拶の次に出てくるのは「母乳?」が本当に多い…

母乳で育ててるかどうか、母乳が出てるかどうか、そんなきわめてプライベートなことをバンバン聞いてくるおばさま方に正直うんざりしていたちょうどその頃、認知症を発症した祖母を介護のため実家で預かることになりました。

記憶が曖昧になりつつある祖母が、赤ちゃんだった息子を見て過去を思い出したようで自分の若い頃の話をしてくれたことがありました。

 

ばあちゃんにとっての、母乳

祖母が初めての子供を産んだのはまだ第二次世界大戦中のこと。

家族で田舎に疎開したものの食べ物は十分に手に入らず、戦地でケガをして帰国していた祖父の仕事もままならずに金銭的にも困る状況。

そんなどん底の貧乏の中で戦後にかけて私の母を含む6人の子供を産んだ祖母は母乳がほとんど出なかったと言います。

飼っていたヤギの乳を飲ませたり、早くからおかゆの上澄みを飲ませたり、近所の母乳が良く出るという方のところにもらい乳に行ったり…と当時の苦労を語って聞かせてくれました。

「ちゃんと母乳がでるんやねえ、ありがたいねえ」と私を拝むように手を合わせ目を閉た祖母、そんな祖母にとって、産後の最大の関心ごとが「母乳」だったんだろうなぁ。

 

いろんなおばさま方にとっての、母乳

母や伯母たち、近所のおばさまたち、話を掘り下げて聞いてみると、「母乳?」と聞いてくるおばさま方にはそれぞれに母乳に関しての苦労話がどんどん出てきます。

祖母のように出なくて困ったとか、粉ミルクを買うのに姑からネチネチいじめられたとか、姑にいじめられないように意地でも母乳を出そうとあれこれ奮闘したとか…

母乳の話題になると止まらなくなるおばさま方を見ていて、粉ミルクがどこでも安価で手に入るし母乳のための栄養にも困らない現代がいかに恵まれているのかと痛感したりもしました。

 

「寝られてる?」

おばさま方も色々大変だったんだなぁと思いながら私も4人の子を生み育てそれぞれに卒乳し母乳からも縁遠くなっていた頃のこと。

道端でたまたま会った後輩や園行事で会うお母さんたち、赤ちゃんが生まれたばかりの知人友人たちに出会った時に「寝られてる?」と毎回聞いてしまっている自分に気づきました。

「わ〜〜赤ちゃんだ〜〜」と声をかけ、あれこれ話している中で必ず「寝られてる?」って自分から聞いてるんですね。そして、寝られてないというお母さんとはその苦労について共感しながら話したり、赤ちゃんが良く寝るからというお母さんには「うちの子たちは寝なかったから羨ましいわ〜」と話し…

あ、これ「母乳?」って聞いてるおばさま方と同じだ…?

 

つい聞いてしまうのは、自分が苦労したことかもしれない

母乳ではたいした苦労をしなかった私が一番困ったのが、我が子が細切れでしか寝ないこと。長く寝て欲しい、自分もゆっくり寝たい…そればかり意識していた時期もあったほど。

私にとって新生児は「寝られなかった自分」を思い出すトリガー(ひきがね)になっていたのかもしれません。

小さな赤ちゃんを抱いた私を見ておばさま方が思い出していたのが、きっと母乳のことで奮闘したり悲しい思いをしたり苦労したりした、過去の自分なんだろうなぁ…

もう私は「母乳?」って話しかけられることはなくなったのだけれど、もし聞かれたときは「この方も母乳で苦労したことがあるのかな〜」とちょっと思いをめぐらせてみるとよいかもしれません。

ちょっとだけ、うんざりが軽くなるかも……

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著者:イシゲスズコ
年齢:38歳
子どもの年齢:小6・小5・小3・5歳

九州の片田舎在住、ぼちぼち働く4児の母ブロガー。生活のなかで出会ういろんなことをあれこれ考え込んだブログ「スズコ、考える。」を運営。Twitterの男児育児あるあるをまとめた共著「#アホ男子母死亡かるた」(アスペクト)がある。

ブログ:「スズコ、考える。」

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