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【医師監修】1歳の子に伊勢海老や玉子かけご飯ってあり?子どもの食物アレルギーについて小児科医 森戸やすみ先生に聞く

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当サイトでご紹介した体験記の中に、「子どもに伊勢海老のお刺身や玉子かけご飯を与えたら、嘔吐や痙攣を引き起こした」という記事がありました。

子どもの食物アレルギーを心配する方からは、「1歳の子にエビや玉子を与えるなんて信じられない」といった声もいただいています。

そこで今回は、小児科医の森戸やすみ先生に、食物アレルギーについて伺いました。

 

Q. エビや玉子といった、アレルギー症状を引き起こすリスクが高い食品は、乳幼児に与えないほうがいいのでしょうか?

A. 様子を見ながら与えるのであれば問題ありません。むしろ、早くから様々な食材を与えることが、アレルギーの発症を防ぐ可能性があることがわかってきました。

食物アレルギーについての考え方は、近年劇的に変わってきています。以前は、アレルギーを引き起こしやすい食物は、赤ちゃんに与えないというのが基本の考え方でした。

その考え方に則って、赤ちゃんには玉子や牛乳、エビ、そば、ピーナッツなどを与えていない人も多いでしょう。

しかし、離乳食の開始を遅らせたり、アレルゲン性の高い食品を除去しても、アレルギーの発症を予防することはできないことが近年わかってきています。

 

米国小児科学会は「食物アレルギーの予防のためには、ハイリスクの乳児では高アレルギー食品の摂取を遅らせるべき」とした2000年の声明を2008年に撤回しています。

アメリカ、ヨーロッパ、日本の各アレルギー学会でも、「特定の食品を除去することでアレルギー発症を防げるというエビデンスはない」としています。

(日本小児アレルギー学会 食物アレルギー診療ガイドライン http://www.jspaci.jp/jpgfa2012/chap11.html

 

アレルゲン性の高い食品を与えて良い月齢に明確な決まりはありませんが、様子を見ながら離乳食に取り入れることに問題はありません。現在では、むしろ早いうちから様々な食材を与えることで、アレルギーの発症を防ぐことができると言われています。食べることで、腸を通してアレルギー反応が起きにくくなる耐性誘導効果が生まれるのです。重度のアレルギー体質でなければ、除去食にしないほうがアレルギーは起こりにくいのです。

(国立成育医療研究センター「離乳期早期の鶏卵摂取は鶏卵アレルギー発症を予防することを発見」 https://www.ncchd.go.jp/press/2016/egg.html

 

ただ、アナフィラキシーのような重い症状が起こる場合には、自己判断で食べさせることには危険が伴います。両親や兄弟が食物アレルギーを持っている場合や、特定のものを食べると具合が悪くなることが繰り返しある場合には、必ず専門の病院を受診しましょう。

 

Q. 食物アレルギーがある場合、どんな反応が出るのでしょうか?

A. 肌にブツブツが出たり、息が苦しくなったり、様々な症状があります。 

食物アレルギーは、「即時反応」といって、通常1~2時間以内に症状が出ます。顔や体にブツブツが出たり、皮膚の腫れ、下痢、嘔吐、息が苦しくなることもあります。心配な症状があれば、すぐに病院に行きましょう。

軽い食物アレルギーであれば、3歳前後で自然に治ることも多いです。

 

Q. 火を通した玉子は大丈夫でも、生玉子でアレルギー反応が出ることはありますか?

A. あります。鶏卵や牛乳は、熱を通すと一部のたんぱく質のアレルゲン性が減るためです。 

玉子の場合、加熱すれば食べられるのに、生はダメという人も多いです。それまで玉子料理を食べていても、生玉子がはじめての場合には、まずは一口だけにしておきましょう。ちなみに甲殻類は加熱してもアレルゲン性が減りません。また食材が新鮮かどうかは関係ありません。

玉子に限らず、生ものは細菌感染で食中毒を引き起こす可能性があるので避けたほうが良いでしょう。生ものは3歳位まで与えないほうが無難です。

 

A. アレルギーを起こしやすい食品をあげる時に注意することはありますか?

Q. まずは一口から。病院が開いている平日の午前中に。 

初めて与える食品やアレルゲン性の高い食品は、何かあった場合にすぐに病院にかかることができるように、できれば自宅で平日の午前中に与えるようにしましょう。量はまず一口から。大丈夫だったら徐々に増やしてみてください。

また、誤嚥を防ぐために、子どもの食べやすい形状にしてあげることも大事です。たとえば粒のままのピーナッツは喉につかえて窒息の危険があるのでNG。小さく切る、ペースト状のものを使うなど工夫しましょう。

 

Q. アレルギーは血液検査で調べることができますか?

A. 血液検査だけではアレルギーの判断はできません。

どんな食材でもアレルギーになる可能性はあり、その全てを検査するわけにいきません。また、血液検査で陽性反応が出ても、食べてみると何の症状もないことも多い。ですから、血液検査の結果だけで食事制限する必要はなく、実際に食べてみないとわからないのです。

 

「食物アレルギー」をネットで検索すると、不確かな情報も多く氾濫しているのが現状です。下記のガイドブックは読みやすくまとまっているので、参考になさってくださいね。

(独立行政法人環境再生保全機構 食物アレルギー対応ガイドブック https://www.erca.go.jp/yobou/pamphlet/form/00/pdf/archives_24514.pdf

 

※※※※※※

以上を踏まえて今回の体験談を読んでみると、

1. 初めて食べるものを病院に行きづらい出先で与えてしまったこと

2. 生ものだったこと(細菌感染で食中毒を引き起こす可能性があるため)

3. はじめは一口から、という原則がなかったこと

の3点が問題だったのですね。

ちなみに、今回の体験談のケースは「アナフィラキシーの症状ではないのでは?」と森戸先生。

「アレルギー反応で発熱することはあまりありません。また、アナフィラキシーにしては発症するまでの時間が長すぎるように感じます。この場合は、伊勢海老を食べた日にたまたま他の原因が重なって嘔吐しただけの可能性もありますね。」とのことでした。

 

子どもの成長発達のためにも、少しずついろいろな食品にチャレンジして、食事の幅を広げていきたいですね。 

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森戸やすみ先生

小児科専門医。一般小児科、NICUなどを経て、現在は さくらが丘小児科クリニック に勤務。2人の娘の母。朝日新聞アピタルで『 小児科医ママの大丈夫!子育て』連載中。

書籍:『孫育てでもう悩まない!祖父母&親世代の常識ってこんなに違う?祖父母手帳 』 (日本文芸社)など著書多数。

取材・文/宇都宮薫