一卵性双生児は一つの受精卵が何らかの要因で2つに分かれることによって生まれます。
なぜ受精卵が分裂してしまうのか、そのメカニズムは未だに解明されていません。もちろん、遺伝が原因とも言えないのですが、やはり血族内に一卵性双子がいると、一卵性双子が生まれるという話を聞くことがあったので、私も夫も、親戚に双子はいないのに双子が生まれてびっくりしたねと話していました。ですが、私は出産後悲しい話を知りました。
私は実家からは新幹線の距離に住んでいて、里帰り出産をしませんでした。母が病気で亡くなっていたため、一人っ子の私の実家には父がいるのみだったからです。また、私自身父に対してあまりいい感情がなく、時々電話連絡をしてはお互いの無事を確かめるのみで、長話はしませんでした。
妊娠した時は、心拍を確認した時点で電話で報告。ただ、双子だしハイリスクだからどうなるかわからない、親戚には安定期まで秘密にしておいてとお願いしたにもかかわらず、即親戚に言いふらさせてうんざりした覚えがあります。
相変わらず軽口で、言いたいから言うという自分優先な性格、本当に娘のことなんか考えてない、そんな態度で娘が大事とかいうな!と心の中が怒りで渦巻きました。
そんなことがありつつも、妊娠トラブルもなんとか乗り越え、ありがたいことに双子は無事生まれました。私は、全身麻酔の帝王切開でぐったりしていたので、父への出産報告は夫から。その後の私は授乳のたびにGCUに通うというハードスケジュールに飲み込まれていきました。
そして、出産して3日目のことです。ようやくちょっと時間ができた私は、さすがに自分の口からも出産報告した方がいいよなと思い、やっと父に電話したのです。すると、おめでとうという明るい声とともに、全く知らなかったことを聞きました。
「言ってなかったけど、うち双子家系なんだよ。お前が生まれる前、俺の姉ちゃんが双子を死産してるんだ。姉ちゃん無事に生まれたって聞いて喜んで泣いてたよ」
父には姉が3人いて、双子を死産したのは真ん中の伯母さんでした。詳しく知りたくなった私は、一番仲がいい一番下の伯母さんにすぐ電話をしてみました。
真ん中の伯母さんは当時助産院にかかっていたそうなのですが、昔はエコーがなく、出産時まで双子とわからなかったそうです。いざ産んでみると、双子の女の子で、生まれた時点で助かる見込みがないと言われたそう。24時間以内に一人ずつ息を引き取ったとのことでした。
その時の様子を一番下の伯母さんは見ていたそうです。それを聞いて、私は号泣しました。背中を寒気が走り続け、ゾクゾクして立っていられません。双子を産んでいた伯母さん、亡くなってしまった双子の女の子、そして無事生まれたうちの双子の男の子。
私は妊娠5ヶ月から双胎間輸血症候群の疑いと言われ、病院で厳重に管理してもらった結果、無事に双子を産むことができました。現代医療があったから、無事だっただけです。もし伯母さんと同じ時代だったら、同じく死産してしまった可能性が高いでしょう。もしうちの双子が死産になっていたら…そして、それを経験した伯母さんの悲しみ、苦しみを考えると、震えが止まりません。
この時代に生まれてきてくれて良かった。心から思いました。そして、無念だった伯母さん、双子の女の子の分もしっかり愛情を持って接したいと感じました。
この話を妊娠初期、入院中に聞いていたら、とても不安になっていたと思います。いつもは軽口の父が、この話を出産後まで伏せていたことに感謝するとともに、少し父を見直しました。
その後、真ん中の伯母さんはうちの双子を気にかけてくれ、その成長を一緒に喜んでくれています。
ゼクシィBaby WEB MAGAZINEの記事
著者:シオモミ
年齢:36歳
子どもの年齢:3歳1か月の双子
夫の転勤を機に出版社を退職、京都へ引っ越したが即双子を妊娠。観光をする余裕もなく一卵性双子男児の育児にあたふた過ごしていたものの、幼稚園というゴールが見えてきて気持ちが軽くなっている。好きなものはマンガ、映画、本、アニメ、お酒。この一杯のために生きている系で、家にビールサーバーを置くのが夢。
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