子ども達が小さい頃、夫が子どもの歯みがきをしようとすると、「パパいやあー、ママがいいー!」と子どもに泣かれた。
今、小学生になった長女に「何でお父さんの歯みがき嫌だったん」と聞いてみると、「はて~、何でだったんでしょうねえ~」と言っている。
とにかく、小さな子ども達の「パパ、嫌」は激しかった。3姉妹とも「ママがいい」と泣いた。夫は悲しそうに、「ブラッシング、力を入れずに優しくしてるんだけどねえ」と言った。
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毎日毎日、小さかった3姉妹は歯みがきのたびに、「パパいやあー、ママがいいー!」と夫を嫌がった。夫が「どうして?」と聞くと、子ども達は「パパいやー!」とだけ答えたが、「そう、でもお父さんは、あなたのこと大好きだよ。歯磨き、パパにさせてくれるかな」と何度も繰り返して言った。
私が「ああ、私がやるから、歯みがき」と言っても、夫は「う~ん、でも僕にやらしてくれるかな」と、歯磨きを続けた。
歯みがき、お風呂のシャンプー、麦茶を子どものコップに入れる、靴を履かせる、とにかく何でも「パパ、嫌!」と拒絶され、それでも夫は「どうして?」だけ聞いて、「お父さんに洗わせてね?いい?」と言いながら子ども達の髪を洗った。
長女が小学2年生になった頃、私は体調を崩して布団に伏していることが続いた。夫は週末に1人で子ども達3人を公園や動物園に連れて行って、一緒にモルモットを抱っこしたり、ボールで遊んだりした。
そうした日が続き、少しずつ子ども達が「歯みがき、パパでもいいよ」と言うようになり、「お父さん、肩車して」「末っ子ちゃんが肩車!」と次女と末っ子が夫の肩車を巡って取り合いをするようになった。
夫は笑って「肩車とだっこでいい?」と2人を持ち上げた。「ああ可愛い。本当に可愛いねえ」と言って、
「何歳までおんぶさせてくれるんだろう。ある日、『もうおんぶとかいいよ』とおんぶが終わる日が来るんだね。でも、その最後のおんぶは、『これが最後のおんぶになるんだ』とは気づかずに終わるんだ。そういう事が1つずつ近づいてるんだよね。末っ子のオムツを替えた最後の1枚なんて覚えてないよ」と言った。
「少しでも一緒に何かをしていたいんだ。色々な最後の日がすぐ来てしまうから」
今、夫が床でゴロンと寝転ぶと、3人の子ども達が次々に上に乗っかって、「パパ、馬になってー!」「起きてー!馬―!」と夫の背中を揺する。
夫は8年間の「パパ、嫌」を乗り越えて、「おいおい、無理だよ、こんなの潰れちゃうから」と笑っている。
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著者:とけいまわり
年齢:40代
子どもの年齢:9歳、7歳、5歳
小4長女、小2次女、5歳末っ子の三姉妹の母。40代教育職WM。趣味は囲碁と漫画
生き物、宇宙等、科学の話題が好き。人混みが苦手で一人が落ち着く 。プロフィールイラストは、にゃぐははさん作@hahanyagu
Twitter:@ajitukenorikiti
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