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【産婦人科医監修】胎盤用手剥離ってどんな処置?痛みの有無などを専門家に教えてもらいました

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ふたりめをソフロロジー式分娩法で出産したmitoさん。和痛分娩だったひとりめの時に比べて痛かったものの、出産直後とっても幸せな気持ちにひたれたといいます。  

そんな幸せ感満載だったmitoさんですが、胎盤がなかなか出てこなくて「胎盤用手剥離」をすることに。この処置が失神しそうなほどの痛みだったらしく、幸せいっぱいの状態から急降下したような状態だったようです。

 

 

mitoさんが体験した「胎盤用手剥離」、初めて聞く人も多いのではないでしょうか。そこでいったいどんな処置なのか、その処置が必要なのはどんな時なのかを、産婦人科医で埼玉医科大学教授の菊池昭彦先生に教えていただきました。

 

Q:出産後、通常だと胎盤はどうなるのでしょうか。

A:赤ちゃんが出てきてからおおよそ5分前後で外に出てきます。

ママと赤ちゃんをつなぐ役割を担う胎盤は、普通、経腟分娩の場合、赤ちゃんがママのおなかから外へ出ると、自然と子宮からはがれ、おおよそ出産後5分前後、かかっても10分程度で外へ出てきます。

 

Q:胎盤が出てこないとどうなるのでしょうか。

A:胎盤が残ったままだと大量出血のリスクが高まり、ママの命にかかわる場合も。

胎盤が出てこないと大量出血や感染を引き起こす可能性が高くなり、ママの命が危険な状態になることもあります。

このような状態にならないよう、分娩後、助産師さんがママのおなかを軽くさすったりして、胎盤が剥がれてきているか(剥離徴候)を確認。剥離徴候がみられた場合は、助産師さんが軽く誘導し、胎盤を外に出します。剥離徴候が見られない場合は、10分程度待ちます。それでも自然にはがれる様子を見られない場合は、産科医が胎盤用手剥離を行います。

 

 

Q:胎盤用手剥離とは、具体的にどんな処置でしょうか。

A:産科医が手を入れて胎盤の状況を確認。子宮から剥がせそうな場合は外に出す処置です。

産科医が腟から左手を入れ、右手でママのおなかをおさえながら、胎盤の状況をチェック。子宮からはがしても大丈夫な場合、手で外へ出す処置です。

外へ出すまでにかかる時間は胎盤の癒着程度によって異なります。たとえば子宮の壁からは、はがれているが、なんらかの理由で子宮が収縮してしまい、それによって子宮口が閉じてしまって外に出ない場合があります。これを「胎盤嵌頓(たいばんかんとん)」と言いますが、このケースだと比較的短時間で終わります。

また、子宮の壁にくっついて出てこない場合、2つのケースが考えられます。1つは「付着胎盤」で、子宮にくっついてはいるものの手で剥がしても大丈夫なケースです。子宮に付いている縁からそっと胎盤をはがして外に出します。無麻酔で行われることも多いので、mitoさんのように強い痛みが伴います。ただ、できる限り早く胎盤を出さないともっと大きなトラブルになってしまうので、医療上必要な処置です。

もう1つは「癒着胎盤」といって子宮にがっちりくっついてしまっている場合です。手で無理やりはがそうとすると子宮壁が傷つき、出血が止まらなくなることも。この場合は手で剥離するのをやめ、他の治療法を考えます。

 

Q:胎盤が自然とはがれてこない原因は?

A:はっきりとした原因はわかっていません。

癒着胎盤や付着胎盤の原因ははっきりとわかっていません。ただ子宮筋腫の手術や流産の手術、帝王切開など、子宮内膜に傷をつけるような手術などを過去に行っている場合は、癒着する傾向が高いといわれています。ただ、手術歴が無い人や、初産でも可能性はゼロではありません。誰にでも起こりうる可能性があると考えてください。

 

 

Q:かなり痛そうなので、できれば胎盤用手剥離はしたくないです。予防法はありますか。

A:残念ながら予防法はありません。

「これを妊娠中にやっておくと、自然と胎盤がはがれる」というような予防法はありません。ただ、出産前から「胎盤が剥がれて来なかったらどうしよう…」と心配すると、ストレスになってしまうこともあります。そのため、妊娠中は胎盤用手剥離のことは頭の片隅に置き、毎日のマタニティライフを楽しむことにを考えてくださいね。

 

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菊池 昭彦先生

埼玉医科大学総合医療センター

産婦人科・総合周産期母子医療センター母体胎児部門 教授

1988年東京大学医学部医学科卒業後、東京大学医学部附属病院産婦人科、麻酔科研修医、社会福祉法人恩賜財団母子愛育会愛育病院産婦人科、東京大学医学部附属病院産婦人科、長野県立こども病院総合周産期母子医療センター産科副部長、岩手医科大学医学部産婦人科学講座教授、同大学医学部付属病院総合周産期母子医療センター センター長兼任などを経て2019年に埼玉医科大学総合医療センター産婦人科・総合周産期母子医療センター母体胎児部門教授に就任。

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