妊娠・出産・育児の情報サイト


【産婦人科医監修】インプランテーションディップって何?着床時に誰でも起こること?専門家に聞いてみました

妊活中や生理周期が不規則の場合、毎日基礎体温を測って生理周期を把握している人も多いのではないでしょうか。

PCOS(多嚢胞性卵巣症候群)ぎみで生理周期が長めのおかゆさんは、高温期7日目に一時体温がダウン。8日目に再び高温期になるものの、9日目にまたさがったため、「今月も生理が来るだろう」と、妊娠諦めモードになったそうです。でも10日目以降、体温は上昇。生理も来なかったため、高温期21日目に妊娠検査薬を試したところ、くっきり陽性反応が!その後、めでたく病院で妊娠が判明したそうです。  

 

 

おかゆさんが調べたところ、受精卵が着床する際に一時的に基礎体温が下がる「インプランテーションディップ」という現象だそうです。そこで、受精卵が着床する際に基礎体温が下がるのか、インプランテーションディップはみんなに起こる現象なのかなどを、多くの妊婦さんの診察を行っている田園調布オリーブレディースクリニック院長の杉山太朗先生に教えていただきました。

 

Q:インプランテーションディップとは、何ですか。また、起こる理由をお教えください。

A:排卵後、高温期の途中で一時的に基礎体温が下がる現象です。

インプランテーションディップは、排卵して高温期に入った後、一時的に基礎体温が下がる現象を指します。

女性の体に入ってきた精子は、卵子と卵管で出会い、受精。その後、受精卵は子宮へと移動し、子宮内膜と呼ばれる場所に着床して妊娠成立となります。個人差がありますが、着床する時期は排卵から1週間前後になります。

着床の際、おかゆさんのように高温期にもかかわらず一時的に基礎体温が下がる現象がみられる場合があります。ただ、着床するタイミングでなぜ基礎体温が下がるかについては解明されておらず、全員にみられる現象とは限りません。また、「前日よりも〇度下がったらインプランテーションディップである」など、明確な定義もありません。

ちなみにインプランテーション(implantation)は着床や移植、ディップ(dip)は沈む、下がる、へこむという意味になります。

 

Q:インプランテーションディップが起こるのは着床時のみでしょうか。また他に着床時のサインとして自覚できるものはありますか。

A:起こるタイミングは着床時だけで、高温期の半ば頃になります。

一般的に排卵後、高温期は14日間続きます。妊娠していない場合は、高温期の後、基礎体温がガクンと下がり、生理がやってきます。インプランテーションディップは、高温期の半ばにみられることが多いので、「着床のサインではないか」と考えられ始めました。

インプランテーションディップ以外で、着床のサインとして知られているのが、着床出血や着床痛です。

着床出血は、受精卵が子宮内膜にしっかり入り込む際に出血するものといわれています。時期はインプランテーションよりも少し遅く、生理開始予定日前後。生理時の出血よりも少なく、場合によっては茶色のおりものがみられることもあります。

着床痛は、同じく受精卵が子宮内膜に侵入する際、おなかにチクチクとした痛みやズーンとした鈍痛があらわれるといわれている現象です。着床時期から生理予定日の間にみられます。

ただし、着床出血や着床痛も全員にあらわれるわけではなく、医学的にメカニズムが解明されたものではないため、あくまでも「着床時期と同時期よくあらわれる現象」と考えてください。

 

Q:インプランテーションディップが起こる人の確率はどのくらいでしょうか。

A:どのくらいの人に起こるかは明らかになっていません。

妊娠した人のうち、どのくらいの割合の人にインプランテーションディップがみられたかは明らかになっていません。

今後、インプランテーションについて研究を行うところが出てくる可能性はあるかもしれません。

 

Q:インプランテーションディップが見られた場合、妊娠成立していると考えていいものでしょうか。

A:体温が変動しても妊娠しているとは限りません。

基礎体温は、インプランテーションディップ以外でも下がったり、上がったりすることがあります。そのためこの現象がみられたとしても妊娠している、もしくは妊娠している確率が高いとは言い難いでしょう。

きちんと妊娠しているかを調べるには、薬局などで販売されている妊娠検査薬を使って調べるのがいいでしょう。市販されているものは、一般的に次回の生理予定日の1週間後から検査することができます。

 

Q::インプランテーションディップ以外で基礎体温の変動が起きやすいのはどんなときでしょうか。

A:ホルモンバランスの乱れや黄体機能不全など、いくつかあります。

基礎体温が想定していない時期に変動する理由はいくつかあります。

ストレスや疲労が重なった場合、ホルモンバランスが乱れることで基礎体温が変動することがあります。

また、基礎体温が正確に測れていなかったり、いつもと違った時間に測定したりすることで「体温が変な時期に下がった」と思う方もいるようです。できるだけ同じ時刻に起きるようにし、ふとんやベッドから起きあがる前に測定することが、正しい体温を測定するうえで、とても大切です。

通常、排卵後は、卵巣内に残った卵胞から黄体ホルモンが分泌され、黄体ホルモンの働きによって10~14日間高温期が続きます。もし高温期が9日ほどしか続かず、そのまま低温期になることが多いなら、黄体機能が低下している可能性があります。黄体ホルモンは、妊娠を継続させるうえでとても重要なものです。機能不全をそのままにしておくと不妊につながるケースもあるので、高温期が9日以下で終わる月が3カ月程度続く場合は、一度産婦人科を受診してみてくださいね。

着床時の現象の1つといわれるインプランテーションディップですが、なぜ一時的に体温が下がるかなど、わかっていないこともあります。

このように人間の体や妊娠にまつわる現象には、神秘的な部分がまだ多く残っています。妊活中だとどうしても基礎体温の変動で一喜一憂してしまいますが、できるだけおおらかに構えるようにしてみてくださいね。

 

 

 

 

 

 

杉山太朗先生

医学博士。田園調布オリーブレディースクリニック院長。

 

2001年信州大学卒業後、東海大学医学部付属病院、東海大学医学部専門診療学系産婦人科講師を経て、2017年に田園調布オリーブレディースクリニック院長に就任。やさしい先生のお人柄とわかりやすくソフトな説明に惹かれ、遠方から通う患者さんも多い。4人のお子さまのパパ。

※プロフィール情報は記事掲載時点の情報です。