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【医師監修】妊娠中の飲酒はダメ!でも、どうしてお酒を飲んだらいけないの?

「妊娠中の飲酒はダメ」と聞いたことがある人は、かなり多いのではないでしょうか。実はお酒のアルコールは、胎盤を通過しておなかの赤ちゃんにも運ばれてしまいます。ここでは、アルコールが赤ちゃんに与える影響がどんなものかについて、詳しく解説します。

監修医師

宗田 聡先生

広尾レディース院長
茨城県立医療大学客員教授

医学博士。日本産科婦人科学会認定医・指導医。臨床遺伝学認定医・指導医。筑波大学卒業後、筑波大学講師として臨床・研究・教育に従事。その後、米国ニューイングランドメディカルセンター(NEMC)遺伝医学特別研究員、茨城県周産期センター長(筑波大学産婦人科臨床准教授兼任)などを経て、2012年より広尾レディース院長。東京慈恵会医科大学非常勤講師、筑波大大学院非常勤講師などもつとめる。

妊娠がわかったらお酒はNG!絶対にやめよう

アルコールは胎盤を介して赤ちゃんにも運ばれる

「妊娠中は禁酒」というのは、妊婦生活を送るうえでの大原則として広く一般的に知られています。なぜなら、アルコールは胎児にさまざまな影響を与えてしまうことがわかっているからです。

妊婦さんがお酒を飲むと、アルコールは胎盤を介しておなかの赤ちゃんにも運ばれます。赤ちゃんに運ばれたアルコールは赤ちゃん自身の肝臓で代謝されることになりますが、当然ながら、胎児の肝臓は未熟。うまく処理できなければ、結果としてさまざまな害を及ぼすことになります。

少量であってもNG。きっぱり禁酒を

また、アルコールの害については、お酒の量が少量であればOK、多量であればNG、とも言い切れません。多量のほうがリスクは高くなりますが、過去には少量でも影響が出たという報告もあります。ですので、1杯だけなら…ということもやめて、「妊娠中は禁酒」とするのが正解です。

飲酒による影響はさまざまな症状で現れる

胎児発育への影響だけでなく生まれた後にも影響が

妊娠中に飲酒をするとどういうことが起こる可能性があるのでしょうか。

飲酒による赤ちゃんへの影響は多様な症状となって現れることから、「胎児性アルコール症候群(FAS: Fetal Alcohol Syndrome)」と呼ばれています。

大きくふたつに分けると、妊娠中に起こる「胎児発育不全」と、赤ちゃんに生まれつきの病気をもたらす「先天異常」。また近年では、ADHD (注意欠陥・多動性障害)や成人後のアルコール依存症リスクの上昇なども指摘されており、より広範囲での影響があるとみられています。

胎児の発育の遅れ(胎児発育不全)

胎児発育不全とは、赤ちゃんがおなかのなかで発育の遅れがみられることです。過去の大規模な調査では、1日60g以上のアルコールを妊娠初期に飲酒した妊婦さんから生まれた赤ちゃんは、体重や頭位が明らかに小さい、という結果が示されています。

胎児発育不全の赤ちゃんは、出生後にさまざまな合併症や精神発達の遅れを発症するリスクも上昇します。

生まれつきの病気(先天異常)

先天異常として代表的なものが、小さな目や薄い唇といった外見に現れる症状です。また、多動や学習障害などの症状が出ることも。これらはアルコールによる中枢神経系の障害によるもので、学習、記憶、注意力の持続、コミュニケーション、視覚・聴覚などにも異常をもたらし、赤ちゃんの出生後の生活にも影響します。その他、生まれつきの心臓や関節の奇形が現れることもあります。

妊娠に気づく前に飲んだとしても、そのあと飲んでなければOK

妊娠に気づいてすぐ禁酒すれば大丈夫

おなかの赤ちゃんにさまざまな影響を及ぼすアルコールですが、中には、妊娠に気づく前にお酒を飲んでいて、心配や後悔する人もいるでしょう。しかし、最近は妊娠検査薬なども市販されていて、妊娠とわかる時期も早くなっています。妊娠直前や直後であれば、大きな心配はありませんが、不安な時は主治医に相談してみましょう。大切なのはこれからの妊娠生活で、おなかの赤ちゃんの健やかな成長を願い、禁酒を励行することです。

また、夫が飲酒をしていて性交し、妊娠にいたった場合の影響を気にする人もいますが、この場合も、精液に含まれるアルコール濃度は無視できる程度にわずかであり、影響はないと考えられています。

飲み会の席などでは必ずノンアルコールで

妊娠中も仕事を続ける場合、勤務先での飲み会などは、なるべくならば体の負担を考えて欠席するのが望ましいですが、やむをえず出席する場合でも、ノンアルコールの飲み物を楽しむようにしましょう。

この記事のまとめ

妊娠中は禁酒を徹底して赤ちゃんを守ろう

胎児性アルコール症候群は、妊娠中に飲酒さえしなければ確実に防ぐことができる病気です。おなかの中でアルコールにさらされた場合の赤ちゃんへの影響をよく理解し、妊娠中は禁酒を徹底しましょう。やむを得ず勤務先の飲み会などに出る場合でも、ノンアルコールの飲み物で楽しむなどして、その場を乗り切りましょう。

構成・文/
秋田恭子
イラスト/
山村真代

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