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【感染管理認定看護師監修】 免疫力が落ちる妊婦さんの食事は要注意! 食中毒予防ガイド

免疫力が低下している妊娠中は、食中毒にかかるリスクが高まります。気になる赤ちゃんへの影響や、食中毒予防のための注意点などについて、感染管理認定看護師の並木弥生さんに伺いました。

感染管理認定看護師

並木弥生さん

株式会社BDメディコン クリニカルサポート。国際医療福祉大学三田病院 感染対策室主任を経て現職。感染管理認定看護師として、感染対策に関するセミナーや講座の講師を務めるなど活躍中。2児のママ

妊娠中に食中毒になったときのリスクは?

妊娠中は免疫力が低下するので特に注意が必要

妊娠中は赤ちゃんを異物とみなして排除しないように、一時的に免疫力が下がります。そのため、普段に比べて食中毒にかかる率が20%も高まると言われています。もし妊婦さんが食中毒になると、嘔吐でおなかが張ったり、下痢で脱水を起こして子宮収縮が促されたりして、切迫流産や切迫早産を招く心配があります。そのため、これまで以上に注意が必要です。

赤ちゃんに影響するケースもある

食中毒を起こす菌の多くは、胎盤を通過しませんが、一部、胎盤を通じておなかの赤ちゃんに感染し、影響をおよぼすばい菌もあります。そもそも妊娠中の薬の服用には注意が必要。安易に市販薬にたよれない時期だからこそ、慎重になるべきです。妊娠中に食中毒への対処法が身に付くと、産後、赤ちゃんの離乳食や幼児食を作る際にも習慣となり、ずっと役立ちます。

妊娠中の食事で、特に注意が必要なのは?

菌を繁殖させてしまう、やりがちな習慣

冷凍の肉や魚を解凍する際、面倒だからと室温に置いて自然解凍していませんか?長時間室温にさらすと、ばい菌が繁殖しやすくなります。流水解凍や電子レンジなどで解凍時間を短くしましょう。また、カレーやシチューなどをコンロに置いてひと晩寝かせるのもやりがちですが、液体の中で繁殖する菌もあるので注意しましょう。また、生肉には危険な菌がいっぱいなので、生肉を切った包丁やまな板で、そのまま野菜を切るのはご法度です。

生肉や非加熱殺菌チーズには要注意

普段は大丈夫でも、妊娠中に油断大敵な細菌やウイルスがいくつかあります。例えば、生肉や非加熱殺菌チーズなどには、リステリア菌という赤ちゃんへの影響もある危険な菌が潜んでいる可能性があります。生肉にはトキソプラズマも潜んでいる心配が。また、たまごの殻にはサルモネラ菌が付着している可能性があるので、調理中に殻が食品に入らないようにする、冷蔵庫に保存するときにはケースごと入れるなどの注意を。

コラム

妊婦さんが特に注意したい菌やウイルス

○リステリア菌
流産や早産など、胎児に影響する場合も。生の肉(レアステーキ、生ハム、サラミ、ユッケ、パテなど)やナチュラルチーズなど非加熱処理食品に注意を。

○カンピロバクター
胎盤感染で髄膜炎を起こした症例がある菌です。特に生の鶏肉は要注意。

○トキソプラズマ
流産や新生児視力障害の症例もある寄生虫。生肉や猫の糞などに潜みます。食事だけでなくペットのお世話、ガーデニングの際にも手袋をするなど注意して。

○ノロウイルス、E型肝炎ウイルス
ウイルス感染で激しい腹痛や発熱、嘔吐が起こります。重症化すると子宮への影響もあります。

食中毒予防のために心がけたいこと

冷温キープでばい菌を増やさない

買い物は調味料など常温保存品を先に、次に生鮮食料品の野菜、最後に肉・魚類とカゴに入れる順番にも配慮を。夏は保冷剤や保冷バッグを持って行き、帰宅後は早めに冷蔵庫へ。冷蔵や冷凍の状態で玄関先まで届けてくれる宅配も便利ですね。生物は個別に分けて、汁もれからの感染を防止。冷蔵庫内は7割以下にして、庫内温度が上がらないよう、ドアの開けっぱなしにも注意。冷蔵庫は10℃以下、冷凍庫はー15℃以下をキープします。

洗って、分けて、ほかへつけない

食中毒予防で最も大切なのが「洗う」こと。手洗いは水だけでなく、石けんを用いてていねいに洗いましょう。調理前や食事前はもちろん、帰宅後、トイレの後、おむつ替え後も手を洗いましょう。野菜は流水でよく洗い、肉や魚を扱った調理器具は必ず洗剤で洗ってから次の作業へ。また、包丁やまな板は肉用と野菜用を別にする、生肉をつかむ箸、トングを別にする、保存は調理ごとに容器を分けるのも大事。「洗う」「分ける」の徹底で、ばい菌の99%を減らせます。

十分に加熱して菌をやっつける!

多くのばい菌は、熱することでほとんどをやっつけることができます。細菌類は75℃以上で1分以上、ノロウイルスなら85〜90℃で1分半以上が目安。飲食店などでは調理器具や布巾などの熱湯消毒が励行推奨されていますが、手間はかからないので家庭でもぜひやってみて。カレーやシチューなどを温め直しする際も、食材に付着したばい菌をやっつけるつもりで十分に加熱して。熱湯消毒ができない場合は、台所用の塩素系の消毒剤(漂白剤)なども有効です。

コラム

赤ちゃんグッズも洗浄&消毒が基本

赤ちゃんが口にする赤ちゃんグッズもしっかり洗浄&消毒することが基本です。特に、哺乳びんやニプル(乳首)に残ったタンパク質は、ばい菌の大好物! ばい菌の繁殖防止のために、タンパク質をメインに落とせる赤ちゃん専用の洗剤で洗い、その後にレンジ消毒や薬液消毒、または煮沸消毒で衛生管理を心がけましょう。

この記事のまとめ

おかしい?と思ったらかかりつけ医に相談を

おなかを壊したくらいだと、病院に行くほどではないかと思いがちですが、妊娠中は「あれ?おかしいな?」と思ったら、すぐにかかりつけ医に相談してください。自己判断で市販薬やこれまで持っていた整腸薬などを服用するのはよくありません。ここにあげた注意点を心がけ、健やかなマタニティライフを過ごしましょう。

構成・文/
江頭恵子
イラスト/
小泉直子

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