【医師監修】妊娠初期、おりものの特徴は?妊娠前と変わる?
妊娠したかな?と気になる妊娠超初期、さらに、妊娠が分かってから15週までの妊娠初期、おりものにはどのような変化が現れるのでしょうか。
この記事では、妊娠とおりものの関係を詳しく解説。さらに、病気のサインや受診の目安についても詳しく説明します。
監修医師
宋 美玄先生
医学博士。大阪大学医学部附属病院、りんくう総合医療センターなどを経て川崎医科大学講師就任。その後、ロンドンのFetal Medicine Foundationへ留学。胎児超音波の研鑽を積む。
周産期医療、女性医療に従事しながら、テレビ、インターネット、雑誌、書籍で情報発信を行う。産婦人科医の視点から社会問題の解決、ヘルスリテラシーの向上を目的とし活動中。
妊娠前のおりものは?月経周期に合わせて量や特徴が変化
女性の体にとって大切な役割をするおりもの
おりものは、女性性器からの分泌物のことであり、「帯下(たいげ)」とも呼ばれています。主には子宮頸管(しきゅうけいかん)から出る粘液(=頸管粘液)や、腟からの分泌物がまじり合ったものです。腟のうるおいを保ち、雑菌の侵入や繁殖を防ぎ、粘膜を新陳代謝させる役割を担っています。
妊娠していない通常時、おりもののなかの頸管粘液は、月経周期に合わせて量や性状が変化します。
生理周期とおりものの量の関係
生理直後~卵胞期のおりもの
生理が終わった直後は、おりものの量も少なく、サラっとしています。生理の経血の残りが混じって、茶色っぽく見えることもあります。その後、排卵期に向けて、少しずつ量が増えます。
排卵期のおりもの
排卵期は月経初日からおおむね14~15日の時期。おりものはこの直前から増え、色は透明で、さらっとして「牽糸性」と呼ばれる糸を引くような形状へと変化します。「生卵の卵白のよう」と形容されることもあります。このような変化は、排卵に合わせて精子を迎え入れやすくするためであり、排卵が終わると、急速に消失します。
黄体期のおりもの
排卵期のあとの黄体期は、再びおりものの量が減り、排卵期のようなさらさらして糸を引く状態はなくなります。排卵期に比べて粘性が増し、色が不透明で白っぽく、あるいは黄色っぽく見えることもあります。
妊娠したらおりものはどう変わる?量は増えるの?
妊娠超初期(0~3週)には茶褐色のおりもの(着床出血)を経験する人も
上の図のように、黄体期に入ればおりものは減っていきますが、子宮のなかで妊娠が成立している場合、前回の生理初日から3~4週の時期に、少し出血したり、茶褐色のおりものを経験したりする人もいます。これは、妊娠が成立して受精卵が着床するときに、子宮内膜を少し傷つける際に起こる「着床出血」と呼ばれる現象です。
妊娠初期の始め(4~5週)にはおりものには大きな変化は見られない
生理の遅れに気づく妊娠初期の始め(4~5週)では、多くの場合、おりものにはそう目立った変化はありません。しかしこれから妊娠週数が進んでエストロゲンの分泌量が増えていくのに伴い、おりものは増えていきます。エストロゲンは妊娠の維持に必要なホルモンで、腟粘膜の新陳代謝を活発にする作用もあるためです。そのため、なかには下記の体験談のようにこの時期からおりものが増えた、と感じる人もいます。
体験談
妊娠を希望していたため、妊娠前の症状の変化をかなり気にしていました。
ある時、生理予定日前は普段ならおりものが減る時期なのに、量が多くなっていつもと違うと感じ、「もしかしたら妊娠しているかも!」と思いました。
その後、妊娠検査薬で陽性を確認、病院で妊娠2ヶ月と診断されました。やはりおりものの変化は妊娠の症状だったのだなと納得したものです。(参照元:エイミーさん体験談)
ここで押さえておきたいのは、必ずしも妊娠超初期に、誰もがおりものの増加や着床出血を認めるわけではない、ということです。妊娠を期待しているのに、おりものに変化がないからといってがっかりする必要はありません。
妊娠初期全体で見れば、おりものの量は増えていく傾向に
妊娠6週以降、妊娠初期の終わりである15週までの時期には、おりものは一般的に増えていき、それを自覚する人も増えていきます。
体験談
妊娠3ヶ月の頃からおりものが気になり、おりものシートをこまめに換えないと間に合わないほどの量になりました。通常の時よりもサラサラしたおりものでした。
そんな中、当時まだ仕事をしていてしょっちゅうトイレに行けず、おりものシートを替えられなかったせいか、デリケートゾーンがかぶれてしまいました。
普段ならこんなことくらいじゃ病院には行かないのですが、妊娠中ということもあり健診の時に相談すると、妊娠中は量が増えることが多く、やはりこまめにシートを替えて清潔な状態に保つことが大事と言われました。軟膏を処方してもらい1週間程度で治りました。(参照元:エイミーさん体験談)
妊娠とは無関係の、病的な変化に注意
病気のサインとなるおりものを見逃さないで
前述のような、おりものの月経周期による変化や妊娠時の増加などは生理的なものなので、そのままでよいのですが、ちょっと心配な、「病的増加」というケースがあります。妊娠中は妊娠前よりも免疫力が下がっている状態で、細菌などの感染に対して抵抗力が下がっています。おりものの変化のなかでも、下記のような状態に当てはまる場合は、早めに受診をしましょう。
□悪臭がする
おりもののにおいのうち、ほのかに感じる酸っぱいにおいは、異常ではありません。ただ、「アミン臭」と呼ばれる魚の腐ったようなにおいの場合、腟トリコモナス症に代表される細菌性腟炎の可能性があります。
□色が黄色や緑色、または灰色
色の変化も、細菌性腟炎のサイン。これらはかゆみや悪臭などの他の症状を伴うこともあります。腟トリコモナス症では黄色~淡い灰色となり、淋菌感染症では膿のような黄~緑になります。
□かゆみを感じる
かゆみを感じて、おりものの形状が白くてぽそぽそしたカッテージチーズ状の場合は、カンジダ外陰腟炎の可能性があります。形状は酒かす状、粥状、ヨーグルト状などと表現される場合もあります。カンジダは腟の常在菌で、軽症であれば自然治癒する場合もありますが、かゆみがつらければ、受診すると薬を処方してもらえます。
この記事のまとめ
妊娠初期はおりものが増える傾向。でも個人差もあり
おりものは、妊娠前には月経周期に合わせて量が変化します。生理直後は少なく、排卵に向けて増え、次の生理の前までは再び少ない状態です。一方で、妊娠していれば0~3週の超初期は着床出血による茶褐色のおりものが起こることがあり、妊娠初期は一般的には増える傾向にあります。ただしこの変化は全員にあてはまるわけではないので「変化がないから妊娠していないかも」と心配する必要はありません。おりものは体調変化のサインにもなるもの。異常なおりものを感じたら早めに受診をしましょう。
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- イラスト/
- 山村真代
- 構成・文/
- 秋田恭子