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【医師監修】胎児の発育曲線(成長曲線)とは?どのように見ればいいの?

毎回の妊婦健診は、おなかの赤ちゃんの成長がわかってうれしい時間。それと同時に、かかりつけ医から赤ちゃんの発育について、「発育曲線の通りです」、「誤差もありますが、やや小さめ(大きめ)です」などのお話があると、気になる人もいるのではないでしょうか。
そもそも胎児の大きさはどう推定されているの? 発育曲線のグラフはどう見たらよい?
気になる胎児の成長と発育曲線について解説します。

監修医師

林 聡先生

東京マザーズクリニック 院長

産婦人科専門医、臨床遺伝専門医、超音波専門医、周産期(母体・胎児)専門医。広島大学大学院医学系研究科修了後、県立広島病院産科婦人科勤務、フィラデルフィア子ども病院・ペンシルバニア大学胎児診断・胎児治療センター留学、国立成育医療センター周産期診療部胎児診療科 医長を経て、2012年東京マザーズクリニックを開院。
妊娠中からの母体・赤ちゃんの健康管理、プロフェッショナルチームが支える中での無痛分娩を基本とした安全な分娩の提供、助産師による妊娠中および産後ケアの充実という3つの理念をもとに日々の診療を行っている。

胎児の体重はどうやってわかるの?

妊娠18週からは胎児の体重で発育を確認

妊婦健診は、妊婦さんの体とおなかの赤ちゃんが元気で、妊娠が順調に進んでいることを確かめることが大きな目的。胎児の発育を確認する手がかりとして、妊娠初期では頭殿長(CRL:赤ちゃんの頭からお尻までの長さ)や児頭大横径(BPD:赤ちゃんの頭の横幅)を測定していますが、妊娠18週頃からは赤ちゃんの体重の増加も見ていきます。

頭・おなか・大腿骨を測って体重を推定

子宮の中にいる赤ちゃんは実際に体重を測ることができないのに、そもそもどうやって体重がわかるのでしょうか。
実は、胎児の体重は健診時に超音波検査で測る3点の長さから自動的に算出されているのです。エコー画像からBPD(児頭大横径)、AC(躯幹周囲長:腹囲)、FL(大腿骨長:太ももの骨の長さ)の3点を計測し、その数値を計算式に当てはめると、推定胎児体重(EFW)が算出されます。エコー写真をもらったら、EFWの値を確認してみましょう。

母子手帳に載っている「胎児発育曲線」とは

妊娠週数ごとの推定体重のめやすがわかる

妊婦健診でわかった推定胎児体重は、母子手帳に載っている「胎児発育曲線」のグラフに点を打ってつないでいくと週数ごとの赤ちゃんの発育の推移がわかります。

「胎児発育曲線」とは、正期産(妊娠37週0日から41週6日)・正常体重(2500~3999g)で生まれた多くの赤ちゃんがおなかの中にいたとき、超音波検査で計測された推定体重の平均を求めて作られたグラフです。

グラフの上下の線の間に95.4%の赤ちゃんの胎児推定体重が入ることから、測定した推定体重がその枠の中に入っていれば、おおむね正常な赤ちゃんの発育だと考えることができます。

※出典元/日本産科婦人科学会「推定胎児体重と胎児発育曲線」保健指導マニュアル

推定体重には誤差も。心配しすぎないで

ただし注意したいのは、胎児の推定体重にはかなり誤差(ばらつき)があるということ。赤ちゃんの発育は妊娠10~11週くらいから少しずつ個体差が出てきます。また、超音波検査での計測のやり方によっても変わることがあり、±10%程度の誤差が伴うことがわかっています。

だから1回の計測で赤ちゃんが小さい・大きいとわかったり、前の健診から急に体重が増えたり減ったりしても、誤差の範囲であればそんなに心配しないで。赤ちゃんの推定体重がグラフの枠の中におさまっていて、曲線に沿って体重が増えていれば問題はありません。

胎児が小さい・大きい場合の原因は

発育曲線の枠からはみ出していたら

ただし、赤ちゃんの推定体重が胎児発育曲線の枠からだんだん外れていく、時間をあけて測定しても枠から外れている、という状況であれば、誤差の可能性というよりも赤ちゃんの発育に注意が必要だという判断になり、その原因を探っていくことになります。

赤ちゃんの発育が小さいとき

推定体重が胎児発育曲線の枠を下回ることは、ときどき見られます。2つの要因があり、ひとつは赤ちゃんに何かしら病気があって発育しない場合、もうひとつは妊婦さんの健康状態を反映して大きくならない場合です。

そこで、まずは赤ちゃんに病気がないかどうかを超音波で確認し、大きさが小さいだけなのか、あるいは心臓や内臓などに病気があるのかどうかを調べます。

赤ちゃんに病気がなければ、母体の健康状態が赤ちゃんの発育に影響していると言えます。例えば、妊娠高血圧症候群で血圧が高かったり、前置胎盤で子宮内での胎盤のついている位置が低かったりすると、胎盤の機能が落ちて赤ちゃんへ十分に栄養が供給されないということになります。また妊婦さんのBMIがやせ型の場合には、栄養が足りず赤ちゃんの発育に影響すると言われています。

赤ちゃんが小さめであっても体重が増えているようであれば、経過を見守っていきます。しかし体重が増えず、発育曲線からどんどん離れていってしまうような場合は、入院して経過観察となるほか、状況によっては分娩になります。

赤ちゃんの発育が大きいとき

赤ちゃんの推定体重が胎児発育曲線を上回る場合は、妊婦さんの糖尿病が原因のことが多いです。妊娠前からもともと糖尿病だった妊婦さんの場合(糖尿病合併妊娠)、高血糖状態がずっと続いて赤ちゃんにも栄養がいっぱい行くので発育が早くなり、出生体重が4000g以上の巨大児になることも。妊娠を機に血糖値が高くなった妊娠糖尿病の妊婦さんも、食事療法が十分でなく血糖値のコントロールが悪い場合は、母子共に体重が増えてしまいます。
ほかには、赤ちゃんの遺伝的な病気が原因で体重が大きくなることもあります。

さらに、赤ちゃんの大きさと分娩は関係がないので、赤ちゃんが大きいと早く生まれるということはありません。大きい場合はお産が大変になる可能性もあるため、妊娠9カ月(32週~)くらいになったら散歩程度でもよいので適度に体を動かすようにしましょう。

胎児が大きめ・小さめだった 先輩ママの体験談

体験談

助産師さんも私も、みんなが大笑いで迎えた出産。推定体重は誤差800gの大ハズレ!

体質的につわりが重い私。妊娠初期には点滴に通い、結局臨月までつわりは続いて、妊娠前より痩せたまま周産期センターで出産の日を迎えました。陣痛を限界まで我慢していたら病院に着いたときにはすでに子宮口が6cmも開いていて、あれよあれよという間に全開に。いきみ1回で赤ちゃんの頭が出たら、みんななぜか笑っていて、「わー!おっきいよーー!」という助産師さんの声。最後の健診で3000g超えているくらい、と言われていた娘でしたが、なんと3800gで誕生しました。感動的なお産とはほど遠かったですが、娘はたくさんの人の笑い声の中で生まれ、今も成長曲線をはみ出したまま元気に成長しています。(参照元:み。さん体験談

体験談

31週で「赤ちゃんの発育が停滞している」と…。別の病院で測り直した推定体重は?

妊娠中期頃から医師に「赤ちゃんが少し小さめですね」と言われ、健診のたびにちゃんと育っているか不安でいっぱいでした。31週の健診では赤ちゃんの推定体重が約1200g。「発育が停滞している」ということで、里帰り先の産院で診てもらうことになりました。ショックを受けた私はそのまま里帰りもできず、帰り道に大きな病院で再受診。すると赤ちゃんの体重は1300~1400g!え!? さっきと違う!! 翌週に新幹線で里帰りして産院で受診すると、今度は1500g!こんなにも誤差があるんだと改めて思いました。迎えた出産では赤ちゃんの体重は3102g。小さい小さいと言われ続けてきたので、これには産院の先生もびっくりでした。(参照元:むーちょさん体験談

この記事のまとめ

推定体重は1回ごとの数値でなく、全体の増え方を見て

妊娠18週以降は、超音波検査で赤ちゃんの頭部や腹部、大腿骨などを測って推定体重を計算しています。母子手帳にある「胎児発育曲線」に書き込んで、赤ちゃんの発育のようすを確認してみましょう。ただし推定体重には誤差もあるので、毎回の測定値の増減よりも全体的に推定体重がグラフの枠の中におさまっているかどうかを見ることが大切です。
妊婦さんの健康状態を整えることが赤ちゃんの発育につながります。毎日の食事や睡眠を大切にしながら妊娠生活を過ごしていきましょう。

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構成・文/
福永真弓
イラスト/
ヒビユウ