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【医師監修】妊婦は鼻血が出やすい?正しい対策法とは

妊娠中、妊婦さんの体の中は、妊娠していないときと比べて血液の量が多くなります。それは血液の流れにのせておなかの赤ちゃんに酸素や栄養を運ぶためですが、それゆえに妊娠していないときと比べて鼻血のように出血する回数も多くなる方がいます。妊娠中に鼻血が出た場合、どうしたらいいかを一緒に考えていきましょう。

監修医師

杉山太朗先生

田園調布オリーブレディースクリニック 院長

医学博士。2001年信州大学卒業後、東海大学医学部付属病院、東海大学医学部専門診療学系産婦人科講師を経て、2017年に田園調布オリーブレディースクリニック院長に就任。やさしいお人柄とわかりやすくソフトな説明に惹かれ遠方から通う患者さんも多い。4人のお子さまのパパ。

割といる!妊娠中、鼻血が出やすくなったという妊婦さん

妊娠中に鼻血が出やすくなったという方は多いとまではいきませんが、一定の人数いらっしゃるようです。妊娠中に鼻血が出たことがある妊婦さんのエピソードをいくつかご紹介します。

サービス業なのに妊娠初期、ほぼ毎日鼻血が出てました…

体験談

妊娠してからいろいろな体の変化を経験しましたが、なかでも困ったのが妊娠初期の鼻血。一度出るとなかなか止まらないんです。当時、接客業をしていたんですが、新型コロナウイルス感染症流行前で、接客時のマスクはNG。鼻に詰め物をしながらお客さまの相手をするわけにもいかず、仕事にはいけても売り場に立てず、バックヤードにいることが多かったです。(参照元:つぶみさん体験談)

尿道と鼻から出血

体験談

血が出るようになりました。ほどなくして妊娠32週(9カ月)の妊婦健診の内診で出血していることが判明。検査の結果、おそらく尿道の皮膚が薄くなり、なんらかの理由でいきんだときに破けて出血したのではないかと言われたので、鼻も尿道も妊娠したことで皮膚や粘膜が薄くなるのかなと感じたことがありました。(参照元:tikoさん体験談

妊婦が鼻血を出しやすい原因

黄体ホルモンの変化によるもの

妊娠すると手足の先など末梢の血管を広げたり、体に水分をたくわえようとしたりする黄体ホルモン(プロゲステロン)の働きが盛んになります。そうなると体内の毛細血管の血流がアップ。小鼻の内側にもキーゼルバッハという毛細血管が集まる部位があり、そこも血流がよくなるためにむくみやすくなります。毛細血管が集まる部位がむくむと、ちょっと刺激を受けただけでも出血しやすい状態に。こういったことが原因で、妊娠中は鼻血が出やすくなるのです。

自律神経の乱れも原因に

妊娠するとホルモンバランスが変化するため、自律神経が乱れることがあります。自律神経が乱れると鼻の血管が拡張されやすくなり、鼻血が出やすくなることがあります。

妊娠中に鼻血が出やすい時期や体の特徴

個人差が大きいが鼻炎持ちや花粉症の人は出やすい傾向に

妊娠中に鼻血が出やすいかは個人差に因るところが大きいです。
また時期についても一概にいえず、妊娠期全般にわたって出やすくなる人もいれば、初期だけ、後期だけと時期が偏っている妊婦さんもいます。
ただ、妊娠前から鼻炎に悩む妊婦さんや、花粉症の妊婦さんは比較的鼻血が出やすい傾向に。鼻炎や花粉症で頻繁に鼻をかんでいると、刺激に弱くなっているため、鼻血が出やすくなります。

鼻血が出やすくなるのと同じ理由で歯茎などからも出血する可能性あり

鼻血が出やすい原因と同じで、妊娠すると黄体ホルモンが増加。歯肉にある無数の毛細血管が拡張し、歯ぐきから出血しやすくなります。これも個人差に因るところが多いでしょう。

既に貧血で、さらに鼻血が出やすい場合は注意を

1回の出血量にもよりますが、数分で止まる鼻血で大きなトラブルにつながることはないでしょう。ただ、既に貧血と診断されている妊婦さんや、貧血傾向にある妊婦さんは、注意が必要な場合も。これ以上血が減ってしまうと、日常生活で立ちくらみなどを起こす可能性があるので、頻繁に鼻血が出る場合は、主治医に相談してみてください。
また、鼻血が誤って喉の方に流れて飲み込んでしまった場合、気持ちがわるくなったり、吐き気をもよおす場合もあります。喉に流れた場合は飲み込まず、吐き出すといいでしょう。

鼻血が出たときの対策法

「あっ鼻血!」と思った後、まず前傾姿勢をとることが大切。これはうっかり血を飲み込んでしまわないようにするためです。下記に正しい鼻血の止め方をまとめてみました。

1.鼻血が出たら下を向いて体を前傾させる

2.手で両側の小鼻を指でつまむ

3.そのまま座って5~6分安静に。保冷剤で冷やすのもOK。その後止まったか確認を

上を向いたり、首の後ろを軽くたたくなどの方法は間違った止血方法なのでやらないでください。血が垂れないようティッシュを鼻の穴に詰めるのもいいですが、奥に入らないよう注意をしましょう。

病院へ連絡する、しないの目安

通常は産婦人科医に伝えなくてOK

通常は鼻血が出たことをすぐに産婦人科に伝えなくてOKです。心配な場合は次の妊婦健診のときに主治医に相談するのがいいでしょう。

適切に対処しても止まらない、大量に鼻血が出た場合は受診を

かなり頻繁に鼻血が出る、適切に対処したのに止まらない、1回の鼻血の量がかなり大量の場合は、妊娠高血圧症候群、血小板減少などの病気が隠れているケースが稀にあります。ただし、これらを発症している場合、鼻血以外にひどいむくみなどもっと他の症状が出ていることが多いです。
鼻血が20分以上止まらない、出血量がいつもの鼻血と比べて大量、ひどい頭痛を伴う場合は、かかりつけ医に連絡をし、できるだけ早めに受診をしてください。

鼻血が出ることで赤ちゃんが受ける影響

妊娠中、鼻血が頻繁に出たとしてもおなかの赤ちゃんにダメージが加わるようなことはないので、安心してください。

妊娠中の鼻血への予防

鼻を強くかまない

妊娠中にかかわらず、鼻を強くかむ、こするなど鼻に刺激となることを避けましょう。

冬は適度に室内を加湿して

冬の乾燥した空気が鼻に入ると、それが刺激となってくしゃみをしたり鼻をかんだりすることが多くなり、鼻血を誘引する可能性が。室内は適度な保湿を心がけて。
また、部屋の温度が高くなりすぎると鼻血が出やすくなるので、エアコンの温度調節をこまめに行うのも大切です。

ストレスをためない

ストレスが溜まっていたり、睡眠不足、過労だったりする場合、自律神経が乱れて鼻血が出やすくなります。できるだけストレスをためないよう、睡眠時間を充分にとる、趣味を楽しむ時間を作るなどして自分自身をリラックスさせてあげましょう。

葉酸、鉄分をしっかり摂る

しばしば鼻血が出るため貧血が気になる妊婦さんや、貧血傾向にある方は、血を作る役割があり、いたんだ細胞をなおす役割を担う鉄分や葉酸、ビタミンB12などを積極的に摂るようにしてください。食品などからも摂取できますが、充分な量をなかなかとれません。サプリメントを併用し、上手にとるようにしましょう。

この記事のまとめ

妊婦はホルモンの影響で鼻血が出やすいので、なるべく鼻に刺激を与えないことが予防の第一歩

妊娠中は黄体ホルモンの影響で鼻周辺がむくみやすくなります。ちょっと刺激でも出血しやすくなることから、鼻血が出やすくなります。妊娠中は、鼻血を予防するために、鼻をつよくかんだり、こすったりして刺激をあたえないようにしましょう。もし、鼻血が出たとしても、自分で正しく止血すれば数分で止まるものが多いので、過度に心配しなくて大丈夫です。もしなかなか止まらない、止血した後でも心配な場合は、ひとりで悩まず、かかりつけの産婦人科医に連絡をしてみてくださいね。

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構成・文/
高橋知寿
イラスト/
小波田えま