「妊娠中に上の子が水疱瘡に!? 自分に免疫があるかどうか焦った」というヒビユウさんの記事にあるように、妊娠中に身近な人がウイルス感染した場合はどうすればいいでしょう? ワクチン接種と合わせて、広尾レディースの院長 宗田聡先生にお聞きました。
妊娠中にウイルス感染の疑いがあった場合はどうすればいい?
「妊娠中は、普段よりも免疫力が下がるため、体内に入った病原菌が排除しにくい状態になります。妊娠前に比べ、ちょっとしたことでも重篤化しやすいため、高熱など、疑わしい症状があったときは、事前に病院に電話で相談をしてから受診するようにしてください。受診先は普段の妊婦健診をしている産科ではなく通常の内科で大丈夫です。むしろ、産科を受診することは、他の妊婦さんに病気を移してしまう危険性があるため控えてください。定期妊婦健診も状況を産院やクリニックに伝え受診を延期するようにしましょう」。
自分が抗体を持っているかは、どうやってわかるの?
「風疹の場合は、妊娠15週までに妊婦健診でおこなう血液検査で『抗体価』を調べています。8倍未満は免疫なし、8~16倍は免疫が低い、32~128倍は免疫あり。抗体の数値が16倍以下だった人は、産後できるだけ早い時期に風疹ワクチンを接種しましょう。過去に抗体があったとしても、年齢とともに抗体は減るので安心はできないのです。
その他のワクチンの抗体検査については妊娠中に任意で受けることもできますが、疑わしい場合は抗体検査よりも妊娠前や産後にワクチン接種することをお勧めします。ワクチンを接種しても授乳への影響はなく、抗体検査をうけるよりワクチン接種することのほうが推奨されています」。
妊娠中に接種できるワクチンは?
「妊娠中に接種できるワクチンはインフルエンザだけです。インフルエンザのワクチンは不活化(ふかつか)ワクチンと呼ばれ、ウイルスの病原性をなくしたもの。おなかの中の赤ちゃんに影響を及ぼさないため、妊娠中でも安心して接種することができるのです。
水疱瘡、麻疹・風疹、流行性耳下腺炎のワクチンは、いずれも生ワクチンと呼ばれ、弱毒しているとはいえ、生きているワクチンを接種します。母子感染の危険性が無いと言い切れないため、妊娠中の接種はNGです」。
インフルエンザ予防接種の適切な時期は? 妊娠初期は避けた方がいい?
「ワクチンの接種後、体に抗体が作られるまで2週間程度かかるため、妊婦さんはインフルエンザの流行が始まる前、10月くらいから接種するのがお勧めです。
インフルエンザの予防接種は薬剤と異なり胎児への危険性がないため、妊娠週数を問わずいつでも接種することができます。
インフルエンザワクチンの効果が持続するのは約3ヶ月。そのため、毎年シーズン毎に接種する必要があります」。
(厚生労働省「インフルエンザQ&A」http://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou01/qa.html)
感染症を予防するために妊娠中にできることは?
「手指についたウイルスは、飲食を通して口から、顔を触ることで鼻や目の粘膜から感染します。予防するにはとにかく手洗いを徹底すること。帰宅時はもちろん、食事支度の前、不特性多数の人が触ったものに触れた後、上の子がいる場合はお世話の後など、こまめな手洗いを心がけましょう。アルコール等での除菌・消毒も効果があるので、除菌用アルコールジェルなどを利用するのもよいでしょう。
インフルエンザウイルスなど冬に流行するウイルス性のものは、乾いた空気を好むため、加湿器や室内に洗濯物を干すなどの加湿対策も効果的です。
妊婦さんへの予防で大切なのは、パパや同居の家族がしっかりワクチン接種を受けること。予防接種を受けることは、職場や周りの妊婦さんへの感染予防にも繋がります」
ゼクシィBaby WEB MAGAZINEの記事
医学博士、日本産科婦人科学会認定医・指導医。「広尾レディース」院長。20数年の産婦人科臨床経験を活かし、最先端で専門的な医療を提供すると同時に、女性の心とカラダに関する啓蒙活動も積極的に実施。
『31歳からの子宮の教科書』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)など著書多数。