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【医師監修】双子を授かった!妊娠中から出産までの流れと注意ポイントを解説します

2人目妊活をしていたツマ子さん。自宅で妊娠検査薬を使ったところ陽性反応が!以前から「2人目はこの病院で産んでみたい」と考えていた産院を受診したそう。各種検査の後、エコーで確認をしてみるとなんと双子を妊娠していたことがわかりました。

 

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双子妊娠の事実にツマ子さんと夫がビックリしていると、産院の先生から双子妊娠についてのリスクや注意点を説明され、妊娠したことへの喜びは感じつつも、新たな課題が出てきてちょっと不安を感じたそうです。

 

 

そこで、双子を妊娠する確率から、実際に双子を妊娠した場合の生活や出産時の注意点などを、多くの妊婦さんの健診や分娩に携わっている荻窪病院の産婦人科医の片岡典子先生に聞いてみました。

 

Q:双子を妊娠される方は、全体の妊娠の何割ぐらいでしょうか。

A:日本で双子を妊娠する確率は不妊治療を除くと1%未満といわれています。

日本では、双子を妊娠する頻度は、不妊治療を除けば約1%未満と推測されています。

双子妊娠の頻度は、人種、ママの年齢、出産歴、遺伝、不妊治療の有無などにかかわりがあります。なかでもアジア系は多胎の頻度は低いといわれています。

また、ママの年齢が高くなると増える傾向にあり、ママ自身が双子であった場合、頻度は若干増えるのではないかという報告がされています。

不妊治療による多胎の増加は一時問題となりましたが、現在はガイドラインが修正され、多胎の頻度は減少傾向にあります。

 

 

Q:体験記では医師から「妊娠初期は通常4週に1回の健診ですが、双子なので2週間に1度来てください」と言われています。双子妊娠の場合は、どこの医療機関でも2週に一度でしょうか。

A:胎児の間で胎盤を共有する「一絨毛膜双胎」の場合は、2-3週間に1度の健診がすすめられます。

絶対基準はないのですが、双子のなかでも胎盤を胎児同士で共有している「一絨毛膜双胎」は、心配される合併症がいくつかあるため、 16週以降は2週間ごとに健診を受けることがすすめられています。

一番多くみられる「二絨毛膜双胎」は、それぞれの胎児に胎盤があるタイプです。初期の健診は他に合併症などがなければ4週に1回でも問題ないと考えます。医療機関や医師によっては、3週間に1回にするケースもあります。

 

 

Q:体験記でツマ子さんが医師に説明を受けている「双胎間輸血症候群(TTTS )」とはどういったものでしょうか。

A:「双胎間輸血症候群(TTTS )」とは、胎盤と赤ちゃんをつなぐ血管にトラブルが生じてバランスよく血液が流れなくなることで、発症頻度は1万人出生のうち約1〜3例です。

双胎間輸血症候群(TTTS)は、胎盤内で各胎児の臍帯につながる血管に不具合がおこり、本来であれば均等に分配されたい血流が不均衡になる病態です。

これが起こると一方の胎児は血流過多になって、心不全を引き起こす可能性が高まります。他方の胎児は血流不足になり、発育不全に。どちらの胎児も命にかかわる危険にさらされる場合があります。

このトラブルは胎盤(絨毛)を赤ちゃん同士で共有している一絨毛膜双胎でおこる可能性があり、注意が必要です。双子を妊娠した場合、以下の3つに分類され、双胎間輸血症候群(TTTS)は「一絨毛膜一羊膜」と「一絨毛膜二羊膜」の一絨毛膜双胎で起こる可能性があります。(二絨毛膜二羊膜でも発症報告はあります。)

・一絨毛膜一羊膜・・・胎盤、羊膜を2人の赤ちゃんで共有している
・一絨毛膜二羊膜・・・胎盤を2人の赤ちゃんで共有し、羊膜は分かれている。
・二絨毛膜二羊膜・・・胎盤、羊膜ともに分かれている。

二卵性の場合は二絨毛膜二羊膜となり、一卵性の場合は分裂時期により異なります。 「一絨毛膜一羊膜」の一絨毛膜一羊膜双胎における双胎間輸血症候群(TTTS)の診断基準は確立されておらず、 正確な発症率は不明ですが、「一絨毛膜二羊膜」の双胎間輸血症候群(TTTS)発症率は報告により数値は異なるものの5-15%とされています。発生頻度としては、1万人出生した場合、双子妊娠かつ一卵性かつ双胎間輸血症候群(TTTS)になる症例は約1〜3例となります。

 

Q:同じように体験記内でお医者さんが説明している「バニシングツイン」についてもお教えください。

A:妊娠初期にみられるもので、双胎だったはずが、1人が消失してしまう現象です。

バニシングツインとは、妊娠初期(13週頃まで)で多くおこる現象で、最初は双胎であったもののうち、一つの胎児がvanish(消失)するものです。全双子妊娠の10-40%に及ぶといわれています。消失しなかった胎児は単胎として出生します。

双胎間輸血症候群(TTTS)もバニシングツインは自然発生するものです。医師から指示された健診をきちんと受診し、トラブルが起こっているようならできるだけ早くみつけてもらうことが大切です。

 

Q:二卵性の双子と一卵性の双子ではどちらが妊娠中、出産においてリスクが高いでしょうか。それとも同じでしょうか。

A:上で解説した「双胎間輸血症候群(TTTS )」などの重篤なケースを起こす頻度は、一卵性の方が多いといえますが、一卵性だからといって過度に心配する必要はありません。

二卵性の場合、受精卵2つが着床して発生するため胎盤は胎児それぞれに存在します。胎盤が胎児間で共有されることはない「二絨毛性」なので、基本的にはTTTSのような重篤なリスクがおこる可能性は低いと考えられています。

一卵性の場合、初めから受精卵1つから発生し、成長する(分割する)中で1つの胎盤を胎児2人が共有する「一絨毛膜性」になる場合もあれば、二卵性のように「二絨毛膜性」になる場合もあります。そういったことから考えると、一卵性のほうが、リスクが高そうですが、一卵性だからといって一概にリスクが高いというわけではありません。

分娩においても同様で、一卵性か二卵性かよりは、胎盤のでき方によってリスクに違いが出ると考えられています。

 

Q:体験記にもある通り、双子妊娠の場合は、設備のととのった病院で出産する方がいいでしょうか。また逆に双子ちゃん以上の出産を行わない産院もあるのでしょうか。

A:早産になる可能性が高いため、NICUのある医療施設での分娩を。

双子をはじめ、多胎妊娠は早産になる可能性が単胎妊娠より高いので、新生児管理の観点からNICUのある病院をおすすめします。NICUがない施設でも分娩自体は可能なことがありますが、妊娠経過によっては途中で転院をすすめられる場合もあります。

双子の妊娠が分かった時点で、出産を希望する産院で双子分娩がOKかを、早めに問い合わせをしておくといいでしょう。

 

Q:双子の場合、帝王切開での出産になることが多いのでしょうか。

A:双子の場合は、どちらの赤ちゃんも頭位(正常位)であれば経腟分娩できることもあります。

双子の場合、どちらも頭位(赤ちゃんの頭が下になっている状態)であれば経腟分娩が選択することができます。

しかし早産になったり、後からうまれる子の方が大きい、途中でお尻が下になる骨盤位や、赤ちゃんが横向きになる横位になることもあり、緊急帝王切開が必要なことも。

第一子が頭位であれば経腟分娩が選択可能ですが、双子の出産様式は第二子の胎位、分娩施設の体制、水準など総合的に判断して選択されるため主治医によく確認することをおすすめします。

 

 

Q: 予期せぬ双子妊娠で戸惑いや不安が大きい場合、どうしたらいいでしょうか。

A: ひとりで悩まずに医療機関のスタッフに遠慮なく相談を。

不安なことがあったら、ひとりやご夫婦だけで悩まずに、医療機関のスタッフに遠慮なく相談してみてくださいね。

ただ、きちんと健診を受け、医師の指示を守るようにすれば、必要以上に心配しなくても大丈夫です。私も双子ちゃんの分娩に立ち会っていますが、みなさん無事に出産され、笑顔で赤ちゃんを迎えていました。

また、出産が近くになると「産んだ後、いきなり2人も育てられるかな」と考えてしまう人もいるでしょう。周りに双子ちゃん育児経験者がいるといいですが、必ずしも近くにいるとは限らないですよね。

そんな時は、一般社団法人日本多胎支援協会(https://jamba.or.jp/)で双子ちゃんを育てるうえでのコツやミニ知識を閲覧することできます。また、全国には双子ちゃんや三つ子ちゃんなどを育てる家族のサークルなどがあり、そこで先輩ママの双子育児の乗り切り法などを聞くことができる場合もあるので、前もってチェックしておくといいかもしれません。

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片岡典子先生

荻窪病院 産婦人科 医師

福島県立医科大学卒業後、同大学病院研修、慶應義塾大学病院、聖母病院などに勤務。現在では荻窪病院産婦人科に勤務。医師として、ひとりの先輩ママとして妊婦さんひとりひとりに合った診療を行っている。

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