鹿児島県でフリーアナウンサーとして活躍する岡本安代さん。14歳から6歳まで、5人のお子さんを育てる大家族のお母さんでもあり、現役ママならではの視点を大切にして活動するアナウンサー“ママウンサー”としても注目を集めています。また、家族のことを綴ったブログも人気で、昨年、テレビ番組でも密着されて話題を呼びました。
そんな大家族・岡本家ならではの育児方針について。また、5人の子どもを育てる中でぶつかった壁について。ママウンサーとしての仕事と育児の両立について。余すところなく語っていただきました。
第2回は、5人育児の過酷さと、行き詰まった時の岡本さんなりの解消法を伺います。
「このまま落ちたら楽だろうな」永遠に続くらせん階段のような5人育児
14歳、12歳、10歳、8歳、6歳の5人のお子さんのママである岡本さん。お子さんが幼少期の頃は、ほぼ2年おきの妊娠・出産と止めどなく続く育児で、めまぐるしい日々を送っていました。
「最もすごかったのは、5人目の息子の妊娠中。お腹に赤ちゃんがいながら、上の子たちを抱っこにおんぶ。移動するだけでもひと苦労でした。おっぱいもあげているから常に貧血気味でフラフラ、その上に寝不足。ご飯も、離乳食、幼児食、大人の食事と人によって食べるものが違う。体力的にも家庭の台所事情もてんやわんやで、ワーッとパンクしそうになることもありました」
「このまま落ちたら楽だろうな…」。ある日、2階のベランダで布団を干しながら、頭をよぎったのだそう。ブログやテレビでは、常に元気で前向きに見える岡本さんが、そんなことを思うなんて…と驚かされるエピソードです。
「『自分を抹消したい』といった感覚になるなんて初めてでした。まさか自分がこんな気持ちになるなんて…と、このことでさらに落ち込みましたね。永遠に続くらせん階段のような5人の子どもたちの育児。子どもが病気をした時のケアや予防接種なども絶え間なく押し寄せて…。
家事や育児って、体力も精神力もものすごく費やすのに、仕事と違ってすぐには評価されないものですよね。それはわかっていることなんですが、成果が見えにくいことへのやるせなさも感じてしまい…。当時は、自分ばかりが大変だ、辛いと思ってしまっていたんです。夫と私、2人の子どものはずなのに…と、以前と何も変わりなく仕事を続ける夫をうらやましく思うこともあり、そういう気持ちをぶつけてしまうこともありました。でも、そんな時も夫は、私の思いをただただ聞いて、受け止めてくれました。」
娘目線で書く義父母へのメールで、気持ちの整理ができた
「母親だからやるのが当たり前、そう思っているのにどこかで受け入れられない自分もいましたね」と、当時を振り返る岡本さん。本当にしんどい時には、自宅で1人泣くこともあったそうです。そんな行き場のない思いを落ち着かせるのに有効だったのが、「娘目線で義父母宛に書くメール」だったと言います。
「長女が生まれてから、毎日夫の父母に送っていたんです。それは、子育て日記のようなものなんですけど、私の言葉ではなく、娘目線で書くというもの。例えば『私がせっかく自分でやりたいのに、ママは邪魔するんだよねー。どうにかしてよ、おじいちゃん』とか『朝のお着替え、20分でやっとできた!ママ待ってくれたんだ。ありがとうママ』とか、自分で自分に感謝もしたりして(笑)」
このメールは、横浜に住むご主人の両親が鹿児島に遊びに来てくれた後に、お礼を伝えるという目的で始めたそうです。その時、嫁である自分よりも孫からのメッセージの方がいいのでは?と思いついたことがきっかけだったとか。
「最初『おじいちゃん、おばあちゃん、今日は来てくれてありがとう。たくさん遊んでくれて楽しかった。ママもとっても喜んでたよ』といったことを書いて1枚写真つけて送ったんです。すると、義父母がものすごく喜んでくれて。それから約3年間、毎日そのメールは続きました」
このメールを書くことによって、子どもの気持ちを想像できるし、自分の心の整理もできる。『自分を客観視する』ことができたと言います。
「娘になりきって書いていると、娘は自分で着替えたかっただけで、私を困らせようとしていたわけではないんだとか、イライラして申し訳なかったな、と気づくことができました。『書く』ことで、自分を客観的に見ることができて、気持ちが落ち着くいたんです」
夫には1日置いてから伝える。『お弁当日記』でコミュニケーション!
育児に家事にと疲弊してくると、ついそのイライラを夫にぶつけてしまう、という人も多いはず。岡本さんは、自分の気持ちをどのようにご主人に伝えていたのでしょうか?
「私は、できるだけ1日ぐらい置いて、自分の中でいったん波風を鎮めてから、夫に伝えるようにしていました。ワーッと気持ちが高ぶっている時に話すと、ただ感情をぶつけるだけで、取り返しのつかないことになってしまう気がして。そういう時には、いったん1人でクッションなどに顔を埋めて、『何でこんなことになるんだー! どうしたらいいんだー!』とか叫ぶんです。それで一度感情を落ち着けて、時間を置いてから夫に伝えるようにしていました」
また、岡本さんの場合、ご主人に気持ちをぶつけるとしても、直接言うよりも、手紙で伝えることが多かったそうです。
「できるだけ言葉を選びたいと思い、1日置いて、書くことで伝えていました。夫には毎日お弁当を作っているのですが、そのお弁当と一緒に『お弁当日記』というものをつけていて、それに自分の思いを書いて、一緒に渡すんです。そうすると、その日記に対して夫が返事を書いてくれます。そうやってコミュニケーションをとっています。やはり、私は書くことで心が落ち着くし、その方が夫にも自分の率直な気持ちを理解されやすいのかなと思ったりしますね。
ゼクシィBaby WEB MAGAZINEの記事
岡本安代(おかもと・やすよ)さん
1977年3月8日生まれ。フリーアナウンサー。2001年に鹿児島読売テレビアナウンサーの岡本善久さんと結婚。3男2女の5人の子どもを出産し、育児と仕事を両立する“ママウンサー”として活躍。現在『かごピタ』(鹿児島読売テレビ)などにレギュラー出演中。テレビ出演の他、講演活動なども積極的に行っている。日々の育児について綴ったブログ:「走り続ける岡本家。〜全力で今を生きる〜」も大人気。
構成/相馬由子 取材・文/野々山幸(verb)