筆者のhibikさんは、出産直後、想像していなかった「授乳の壁」に当たりました。赤ちゃんの口が小さかったのと、自分が陥没乳首で思うようにおっぱいを吸わせられず焦る日々…。
そんな中、助産師さんからおっぱいが張ってきて痛い時の対策としておむつを使った方法を教えてもらったそうです。
そこで産婦人科医で田園調布オリーブレディースクリニック院長の杉山太朗先生に、おっぱいが張った時の対処法について聞いてみました。
Q:記事内に、「おっぱいが張ってしまい、痛くて眠れない時に助産師さんから水で濡らした紙おむつをおっぱいにあてるようアドバイスがあった」と書いてありますが、この方法で張りや痛みは緩和されますか?
A:濡れたオムツを乗せる方法でおっぱいの張りや痛みは緩和できます。
hibikさんが助産師さんから教えてもらったという水で濡らした紙おむつをあてる方法は、冷やすことにつながるのでOKです。紙おむつは水分を吸収して保持するしくみになっているので、濡れタオルをおっぱいの上にのせている状態と同じと考えてください。
ただし、濡れタオルも時間が経つと温まってきてしまうように、紙おむつも時間が経つと冷たさが失われてしまいます。定期的に交換するようにしましょう。
Q:入院中、おむつ以外で痛みを緩和させる方法はありますか?
A:多くの病院で常備している保冷剤を当てるという方法があります。
多くの病院で保冷剤は常備されているので、保冷剤を借りてタオルなどにくるんでおっぱいにあてておく方法でもいいでしょう。
Q:今回のhibikさんの「オムツ」と同じように、「おっぱいが張った時にキャベツを貼っていた」という体験談も見受けられるのですが、キャベツは保冷剤の代わりになるのでしょうか?
A:張りが緩和できるかはわかりませんが、感染症の心配もあるのでおすすめできません。
昔、保冷剤などが無い時代にキャベツを貼っていたことがあったのかもしれません。
実際に張りが緩和できるかは定かではありませんが、それよりも食中毒などを引き起こすリステリア菌などの感染の恐れがあるので、お勧めできません。
Q:できるだけおっぱいが張らないようにするには、どうしたらいいでしょうか?
A:赤ちゃんにたくさん飲んでもらうこと、食事などに気を付けて詰まりづらくすることが大切です。
おっぱいの張りや痛みをそのままにしてしまうと、母乳を作り出す乳腺がつまり乳腺炎を引き起こしてしまうことがあります。
乳腺炎になってしまうと、発熱や胸の痛み、発赤、しこりなどの症状があらわれ、ママが辛い状態に…。
乳腺炎にならないためには、赤ちゃんに根気強く飲ませ、どんどんおっぱいを吸ってもらうことが大切です。何度も飲ませることで乳腺が発達し、最初はちょっとしか出なかったおっぱいもどんどん出るようになってくるでしょう。
また、バランスの良い食事やストレスを貯めないなど、詰まりづらい母乳にするような生活を心がけることも重要です。
乳腺炎にならないためのポイントを下記にまとめましたので、ぜひチェックしてみてください。
・乳頭をできるだけ深くくわえさせ、吸いやすくする
・横抱き、縦抱き、フットボール抱きなど、いろいろな抱き方をして授乳のベストポジションを見つける
・授乳間隔を空けない
・乳頭に傷ができてしまった場合は早めにケアを
・ゆったりとした服をきて血行をよくして母乳の出をよくする
・ストレスや疲労は貯めない
・和食中心のバランスのいい食事を心がける
・水分をしっかり取る
・炎症が無い時は湯船につかる、適度な運動をするなどして血行をよくしておく
Q3:退院後おっぱいが張ってしまうなど、授乳やおっぱいに関するトラブルが発生したらどこを受診すればいいでしょうか?
A:母乳外来のあるクリニックもしくは助産院で受診を。
おっぱいがカチコチンに固い、張っているなど、おっぱいの異変に気づいたら、できるだけ早めに母乳外来を行っている産婦人科や産科、助産院を受診するようにしましょう。
出産した医療施設に母乳外来がある場合は、そこで受診を。
ただし里帰り出産などで、すでに自宅に戻ってきている場合は、余裕のあるときに、自宅の最寄りで母乳外来をやっているクリニックや助産院をチェックしておいてください。
クリニックや助産院の中には、「出産した人のみ受診OK」、「予約制」などなんらかの制約があるところもあるので、事前に問い合わせするといいでしょう。
Q:おっぱいの出をよくするために妊娠中からできることは?
A:食生活と下着に気を付けて乳頭マッサージを行いましょう。
母乳の出を良くするために妊娠中から気を付けたいことの1つに「下着」があります。ワイヤー入りのブラジャーでしめつけるよりも、つけ心地がやさしいノンワイヤーのブラジャーのほうが、乳腺が発達し、母乳の出がよくなるといわれています。また、血行が良くなるという効果も。
また、妊娠後期に入ったら「乳頭や乳房のマッサージ」も大切です。乳房は横や下からやさしくもむような感じでマッサージを。
そのほか、妊娠中からバランスの良い食事、適度な運動、ストレスを貯めない生活を行うことがポイントです。ぜひ妊婦さんはできるところから実践してみてください。
ゼクシィBaby WEB MAGAZINEの記事
杉山太朗先生
医学博士。田園調布オリーブレディースクリニック院長。
2001年信州大学卒業後、東海大学医学部付属病院、東海大学医学部専門診療学系産婦人科講師を経て、2017年に田園調布オリーブレディースクリニック院長に就任。やさしい先生のお人柄とわかりやすくソフトな説明に惹かれ、遠方から通う患者さんも多い。4人のお子さまのパパ。
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