検診で相談しても問題ないといわれたのに、どうにもならない子育てに行き詰まり、追い詰められ、娘を追い詰め、一緒に消えてしまいたいと思いつめた日々。
巡回の保健師さんに紹介してもらい、ようやく専門のお医者さんに繋がることができました。
診察で今までの生育歴や現在の状況、発達検査を経ていよいよ結果が言い渡されました。
ADHD(注意欠陥多動性障害)、アスペルガー症候群、広汎性発達障害。 この3つの診断名が娘に付きました。
(現在の診断基準ではアスペルガー症候群も広汎性発達障害も自閉症スペクトラム障害と言われています。)
前々から娘のADHDを疑っていた私。やっぱりそうだったのか・・これでやっと道が見つかるかもしれない、という気持ちがわいてきました。
それと同時に「アスペルガー症候群」と「広汎性発達障害」というなんかニュースで聞いたことあるかな?という程度の診断名がついてきました。なにそれ?
「アスペルガー症候群と広汎性発達障害ってなんですか?」
「んー、自閉症の仲間のようなものです。」
自閉症?!こんなによく笑いしゃべり活発な子が自閉症ですって??信じられない!
当時自閉症のことはほぼなにも知らず、寡黙でパニックを起こす人というイメージしかありませんでした。娘にその診断がついたことがただ驚きでした。
「治りますか?」
「生まれつきの障害なので治るというものではないんですよ。でも対応がうまくいけばできるようになることもたくさんあります。」
治らない。娘は一生障害を抱えて生きるのか。
ショックで涙が止まりませんでした。
元々娘のADHDを疑ってはいたもののほとんど知識はなかったので、専門のお医者さんに繋がれば治療法があって治せるものだろうとどこかで思っていました。
おまけに自閉症の診断までついてきて頭の中は大混乱。
その時に療育を勧められ手続きをお願いしたはずなのですが、ショックでほとんど記憶に残っていません。
帰宅してからも娘が治らない障害を抱えていることがショックで泣いてばかりいました。不安からネットでアスペルガー症候群、広汎性発達障害、ADHDと片っ端から調べまくりました。
我が子に障害があると知って、はいそうですかと受け止められる親はなかなかいません。そんなはずはない、この子は「普通」だ、大丈夫。そう思いたい気持ちとの戦いです。障害だと認めてしまえばこの子の一生はどうなるのか、差別を受けるのではないか、見た目は普通なのだからこのまま黙っていれば普通に育つのではないか、様々な想いがめぐります。中には事実を受け入れるまで何年もかかってしまう方も珍しくはありません。
家庭で育てている間は特に問題もなく、幼稚園や保育園など集団に入ってからや、小学校で学習が始まってから困りごとが見えてきて、園や学校から受診を勧められるケースもあります。そうなると受け入れるのは並大抵ではないと思います。そんなはずはないと受診すら拒否される保護者の方もよくいらっしゃいます。
私の場合は、もともと家で育てている間にどうしようもなく行き詰っていたので、これでやっと育て方の道が開ける、助けてもらえるかもしれないという安堵が半分ありました。そのおかげか私が能天気なのか、3日ほど泣いて暮らしたあとに立ち直ってしまいました。
泣いていたって目の前の娘はなにも変わらないのですから。
ただ娘が発達障害であるという事実を私が知ったに過ぎません。
診断がつこうがつくまいが娘は娘
発達障害であると診断されたとたんに娘が発達障害になるわけではありません。
元々、生まれた時から娘はこの状態であり、発達障害という診断がついたことで、娘のことがわかるかもしれないきっかけを掴めたのです。
ならば、そのきっかけを元にして、前に進むしかない。
ずっとどうしていいかわからず苦しんで来たのです。「診断」は娘を育てるための大きなヒントになるはず。
そう開き直った私は関連の書籍を読み、ネットで情報を集め、ツイッターで同じ発達障害児を持つ先輩方とつながりたくさんのことを教えていただきました。
医療にも継続してかかり、病院に併設された療育センターにも通い始めました。
最初はわからないことだらけでしたが、だんだんと娘の行動の理由が見えてくるようになりました。言葉かけひとつ変えるだけで、娘の反応が違ってくるのです。
少しずつ手ごたえを感じられるようになっていきました。
すべての子供にはその子に合った育て方がある
誰にでも得意なことや苦手なことがあります。ざっくり言うと、その凸凹の差がとても大きく周りとのずれができてしまうのが発達障害です。
診断の基準はありますが、発達障害だからこんな子という決まったタイプがあるわけではなく、みんなそれぞれ違った個性豊かな子供たちです。娘はその一例にすぎません。
診断が付く前は、周りの声に追い詰められ「普通」という型に娘をぎゅうぎゅうに押し込めて危うく潰してしまうところでした。
そうではなく、娘の行動とその原因をしっかり見極め、娘に合うやり方を模索することが大事だったのです。
発達障害がなくても子供はみんな個性を持ったひとりひとり違う人間です。感じ方、見え方、聞こえ方、当たり前と思われることが実は人によって大きく違うこともよくあるのです。
発達障害児の子育ては、その子の感じ方などの特性に応じてカスタマイズしていくものです。その考え方やコツはどんなお子さんにも有効なものではないかと思います。
とはいっても子供と親は別の人間。すべてがわかるはずもなく、11歳になった未だに子育ての悩みは尽きません。それでも今では子供の成長が楽しみで仕方なくなりました。他のお子さんとは違った形かもしれませんが、娘は自分のことを知ろうとし、工夫しながらしっかりと成長を見せてくれています。
現在は普通のクラスで特に問題もなく学校に通うことができています。
発達障害は彼女の全てではなくほんの一部。共生していく道を親子で探っています。
そして我が家には娘と全く違ったタイプの息子がおります。彼もまた発達障害の診断を持っています。次回は息子についてのお話をしたいと思います。
ゼクシィBaby WEB MAGAZINEの記事
著者:なないお
年齢:49歳
子どもの年齢:娘11歳、息子9歳
発達障害を持つ子供たち二人を育てるシングルマザー。乳がんを患い治療中。頭の中をTwitterに垂れ流しながら復活の呪文をとなえています。
娘:明るくスパイシーなアクセル全開系女子。ADHD(注意欠陥多動性障害)、アスペルガー症候群。
息子:おだやかで刺激に弱いダジャレ数学少年。自閉症スペクトラム(広汎性発達障害)
ブログ【うちの子流~発達障害と生きる】URL:http://nanaio.hatenablog.com/
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