「産後、生理が一度も来なかったのに妊娠した!?」というまいこさんの体験記にもあるように「2人目妊娠は生理再開してから」と思っている人は結構いると思います。「月経がなくても妊娠はします」というのは、産婦人科医のきゅー先生。
妊娠前と産後の生理のメカニズム、2人目妊娠の注意点についてお聞きしました。(以下きゅー先生談)
生理(月経)がなくても妊娠はできます
まいこさん、2人目妊娠おめでとうございます。まいこさんは「生理(月経)が来る前に妊娠してしまった!」と驚かれたようですが、実は“生理がきた=妊娠できる”のではなく、月経の前の排卵があったから妊娠できたのです。
ここで、妊娠前と産後の生理のメカニズムについて、簡単に説明しますね。
まずは妊娠前の生理について。生理の目的は“妊娠に備え得る事”なので、脳は卵巣に「妊娠するための準備開始!ホルモンを出せ!」と指示を出します。
卵巣は脳の指令に応えるべく、せっせとホルモンを出し、卵子を包む袋である卵胞を育成。その後無事に排卵が起こると卵胞が黄体に変化して、着床用のベッドとなる子宮内膜の層を厚くし妊娠に向けて準備します。
卵胞が程よく成長したら、精子との出会いを願いつつ(?)卵管から子宮内膜へと排卵。そこで、うまく精子に出会えればよいのですが、残念ながら叶わなかった場合は、子宮内膜は剥がれ月経として体外に出されるのです。まいこさんの場合は、ちょうど排卵が再開したタイミングで着床、妊娠となったわけですね。
「妊娠より育児を優先!」という指令で排卵機能が阻害
産後、生理がすぐに再開しないのはなぜか? 妊娠前は卵巣に向けて指示を出していた脳ですが、産後は「無事、出産したね。じゃあ、今度は母乳を作るホルモンを多く出そう」とおっぱいを作るプロラクチンというホルモンを大量に放出ことに舵を切ります。プロラクチンには、排卵を抑える機能があるので、卵巣は働きたくても働けない開店休業状態に。
産後の女性の体に負担がかからないよう「せっかく念願の赤ちゃんが生まれたのだから、しばらくは妊娠せず育児に専念しよう」と、脳がコントロールしているのです。
産後、1~2年後に生理が再開されるのが一般的ですが、ある程度授乳を終えるとプロラクチンの濃度は徐々に減ってくるため、そこで生理が再開する人もいます。授乳と卵巣のホルモンバランスは、確実に連動しているわけではないので、排卵のタイミングにはかなり個人差があるのです。ちなみに、ミルク派のママの場合、産後1~2カ月で生理が再開したという人もいます。
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妊娠時期別記事
生理がなくてもしっかり避妊しておきましょう
なので「産後すぐは生理がないから妊娠しない」という思い込みは実は危険。特に注意が必要なのは帝王切開で分娩した場合。手術で縫合した傷がまだ完全にくっついていない状態で、おなかが大きくなると、妊娠中にさまざまなリスクを抱えることになります。帝王切開後の妊娠については、産後6カ月~1年の避妊期間が必要です。
産後の排卵再開のタイミングを見極めるのは医師にとっても難しく、2人目を希望する人には、自然に生理が再開するのを待つしかないというのが正直なところ。「産後2年経っても生理が再開しない」という場合は、ベースに月経不順がある可能性もあるので、気になる人は産婦人科医に相談してみてください。
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産婦人科医・医学博士。「遠藤レディースクリニック」院長。アメブロ公認トップブロガー。「専門的な知識をとにかくわかりやすく!」をコンセプトに開設したブログ「産婦人科医きゅーさんが本当に伝えたい事」が評判を呼び、現在23000人を超える読者に向け産婦人科の知識を伝えている。
書籍:『妊娠・出産を安心して迎えるために 産婦人科医きゅー先生の本当に伝えたいこと』(KADOKAWA)