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【医師監修】子宮頚管が2.5cmになったら要注意!「切迫早産」 ~産婦人科医きゅー先生の本当に伝えたいこと~

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産婦人科医のきゅーです。

首都圏にある周産期センターで働きつつ、暇な時間を使って医療関係のブログなんかを書いています。

ブログを始めたきっかけは、「医者の話は難しい!わかりにくい!」「質問すると怒られる!」「お世辞にもいい対応とは言えない」などなど、世間一般の医者のイメージを変えたかったからです。

今回は、「ゼクシィBabyみんなの体験記」をお読みの皆様に「切迫早産」についてお話させていただきます。

 

 

 

早産になりかけ、切迫している状態

「切迫早産」というのは、文字通り、切迫(期限が差しせまる)早産(37週以降の正産期より前に生まれること)で、何かしらの原因により、赤ちゃんが想定外に早く生まれてしまいそうな状態を指します。

切迫早産を引き起こす原因は多岐にわたり一言では説明できないのですが、結果的に子宮と腟をつなぐ”頸”の部分「子宮頚管」が短くなってしまうため、妊娠中期の妊婦健診では子宮頚管の長さをチェックする施設が多いです。

 

早産を防ぐには、ひたすら寝る、横になるのみ!

妊婦さんにとっては「子宮頚管」って、あまり聞きなれない言葉ですよね。子宮頚管とは簡単に言うと、出産まで絶対に開かない扉のようなもの。肛門や尿道に近い場所にある腟周囲は、本来ばい菌が多い部位です。それらのばい菌が子宮内に入るのを予防しているのが、膣内に住み着いている菌(常在菌)である乳酸菌と、子宮頚管なのです。

本来、子宮頚管の長さは4㎝程度。この長さが2.5㎝を切ってしまうと、「切迫早産ですね。できるだけ安静にしてください」とアドバイスされるようになります。施設によって違いがありますが、2.5㎝を切ると「入院しましょう!」と言われる可能性が高くなります。

 

当の妊婦さんは、子宮収縮の自覚があることもありますが、中には無症状のまま、妊娠20週から30週あたりの健診で医師に指摘されて気づくケースも多いので注意が必要です。

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特に感染なども無く子宮頚管が短くなる病態を【頚管無力症】と呼びますが、子宮頚管の強さは遺伝や体質によるものが多いため、中々リスクを判断することは難しいですが、前回のお産で切迫早産と言われたお母さんや、実際に早産になってしまったお母さんは、次の妊娠時にも切迫早産になる可能性も高く注意が必要です。感染がある場合は、ばい菌に対する抗生物質での治療を行う事もありますが、感染が無い場合は…。

ひたすら寝る! 横になる!

なるべく横になって、子宮頚管への負担を減らすのが一番なのです。

二足歩行の人間の子宮頚管は、赤ちゃんと羊水の入った子宮を10カ月にわたり支え続けることになります。想像してみてください。出産直前には5キロにもなる重さです。

子宮頚管への負担を減らすには、体を縦から横になるしかないのです。

だらだら寝ていられるなんて…と思われるかもしれませんが、非常に週数も早く重症の場合は、トイレもシャワーもベッド以外での食事もダメと指示される施設もあるのです。病棟内歩行禁止というガッチガチの管理下に置かれるケースは心理的にかなりキツイですが、必要な処置なのです。

でも、健診で指摘される程度だったら、重いものを持たない、激しい運動はしない、おなかが張ったらすぐ横になって安静にする。日常生活でできるだけ安静を心がければOKです。

 

子宮頸管を糸で縛って早産を防止する方法

先ほど説明した「頸管無力症」の場合。早産の予防策として、子宮頚管をギューッと糸で縛り上げる手術を行う方法もあります(子宮頚管縫縮術)。特に前回の出産が感染を伴わない早産だった場合は、次の妊娠の中期(15から20週くらい)にこの手術を行うことが有効なケースもありますので、担当医とよく相談するようにしましょう。

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きゅー先生

産婦人科医・医学博士。「遠藤レディースクリニック」院長。アメブロ公認トップブロガー。「専門的な知識をとにかくわかりやすく!」をコンセプトに開設したブログ「産婦人科医きゅーさんが本当に伝えたい事」が評判を呼び、現在23000人を超える読者に向け産婦人科の知識を伝えている。

書籍:『妊娠・出産を安心して迎えるために 産婦人科医きゅー先生の本当に伝えたいこと』(KADOKAWA)