私は最初完全母乳育児を目指していましたが、娘が3ヶ月になったのを機に完全ミルク育児に切り替えました。
産前は母乳育児とミルク育児、どちらでもいいや。でもミルク代が浮くし出るなら母乳がいいな。くらいの軽い気持ちで考えていました。
産後も他人から母乳育児を強いるようなプレッシャーを与えられたことは一度もありませんでした。
しかし娘を産んだ後、私はいわゆるガチガチの母乳信仰になっていました。
ではなぜ私はそんな母乳育児こだわり人間になってしまったのでしょう。
その理由を考えると娘が生まれてすぐ、初めての授乳の場面が思い出されます。
助産師さんにおっぱいのあげ方を教わり、いざ初授乳。目も開いていない娘はおっぱいが唇に当たるとぱくっとくわえ、吸いはじめました。
あたたかくて、少しくすぐったい。なんて可愛いんだろうと感動したのを覚えています。
娘が生まれた次くらいに人生で最高に幸せな瞬間だなと感じました。
これから私はおっぱいをあげてこの子を大きくしていこう!そう決心しました。
けれど入院中、おっぱいが張ることはなく、指でつまんでにじむ程度にしか母乳は出ませんでした。
慣れない授乳で血が滲む乳首。母子同室でしたが見かねた助産師さんが預かることを提案してくれました。粉ミルクも与えてくれます。私はそれを選びました。
娘を手放してしまった寂しさ、お腹いっぱいにしてやれない不甲斐なさで一晩中泣きました。
夫はまだ始まったばかりなんだから出なくて当たり前だよ。ゆっくりでいいんだよと励ましてくれました。
母乳は中々出てくれません。日中はおっぱいをあげる練習をしました。娘は相変わらず少ししか出ないおっぱいを上手に吸っていました。乳首が切れ、とても痛みましたがそれでもとても幸せで心地良い時間でした。
退院が近づき、体重が減る一方だった娘はミルクを足すように言われました。言われた通り3時間おきに片乳10分ずつのおっぱいの練習とミルクを足すことを続けました。
新生児期の1ヶ月は本当に大変な1ヶ月でした。昼夜問わず3時間おきの授乳、片乳30分くらい吸っても離さない娘。
お風呂では毎日おっぱいマッサージをし、食べるものは甘いものと油物を避け、和食中心にするよう心がけました。母乳の出がよくなるというタンポポ茶も飲みました。また、近所の桶谷式マッサージにも通いました。
その頃は3時間以上授乳間隔を空けたら母乳が止まる!母乳は与えれば与えるほど作られるものだからミルクを足して甘えるのは悪だ!と思い込んでいました。必死でした。
少しずつですが母乳の量が増えてきたと感じました。それでも満足する量は出ていなさそうな母乳。
深夜にスマートフォンで母乳不足というワードを検索しては落ち込み、娘を抱きながら誰にも気づかれないよう声を押し殺して泣きました。
夫は育児と家事のサポートをしてくれていたし、ミルクを足せばいいのにと言ったりもせず私に任せてくれました。
それでもなぜかずっとイライラが止まりませんでした。夫のいない日中は泣いている娘を見て2人でいるのに孤独感を感じていました。
おっぱいさえ出てくれたらどんなに楽しい育児が出来るんだろう、幸せなんだろう…そんなことばかり考えていました。
産後1ヶ月が経ちました。初めて胸の張りを経験した頃で喜んでいたのもつかの間、1ヶ月検診ではもう少し体重が大きくてもいいねと言われてしまいました。
それでも一応合格ライン。お医者さんも助産師さんも家庭訪問してくれた保健師さんも母乳育児でいけるから大丈夫と言ってくれました。安心しました。
母乳の出は悪いけど出ないわけじゃない。まだ諦めるのは早すぎるし私がここで頑張らなければ!と強く思いました。
それからも30分、よくて1時間くらいしか授乳間隔は空かず、泣きだす娘。トイレや食事以外ずっとおっぱいをあげる日々でした。夫が帰ってくる時間になる頃はもうヘトヘトでした。
3ヶ月近くになって、突然娘が授乳の時にうなったりおっぱいを押したり叩いたりするようになりました。
また1日中グズっているのが当たり前で、この頃の赤ちゃんはごきげんな時間があるというのを育児書で読んで知り、びっくりしました。
ごきげんな時間って何だろう?ごきげんな時間なんてミルクをあげてせいぜい1時間くらいしかない。やっぱりお腹が空いているからグズっているの?心配になりました。
でも先生は大丈夫って言ったはず。足すミルクの量を増やしながら、答えがわからないまま3ヶ月まで母乳をあげることを続けました。
3ヶ月検診。普通は生後3ヶ月ほどで出生体重から倍程度になる体重ですが、娘はそれに800gも達していませんでした。
もう母乳からの免疫を与える期間は過ぎた。これからは欲しがるだけミルクをあげてね。乳は張るときだけでいいよ。先生はそうおっしゃいました。
動揺しました。
なぜ母乳育児で大丈夫でなかったのに大丈夫だと言ったんだ!私は結局母乳が出ない人間だったじゃないか!心の中で先生達を責めました。
いっそあなたは母乳の出が少ないからミルク育児にしなさいと最初から言われていたら、素直にミルク育児を選び、娘にひもじい思いをさせなくてすんだのに。そう思いました。
でもそれと同時に、ミルクで良いと言われ気持ちが楽になったのを覚えています。
病院の帰り道、抱っこ紐の中からニコニコ笑いかけてくれる娘の顔を見ていたら、何かがふっきれました。
何のために母乳育児にこだわってたんだろう?それよりミルク育児にしてこの子の笑顔を長い時間見られる方がずっと幸せで価値があるじゃないか。そう気づきました。私は完全ミルク育児でいくことに決めました。
それから1ヶ月ほどで、今まで酷かった肩こりも治り、授乳間隔は3時間きっちり開くようになりました。娘の体重も平均ど真ん中まで増えました。
夜まで体力も残っており、娘とたくさん遊ぶ余裕が出来ました。また何より娘がごきげんでいる時間が格段に増えたのです。
娘が私に笑顔を向けてくれるのを見て正解を見つけられたんだと嬉しくて泣けてきました。
たくさん今まで我慢させてごめんね。悲しくて怖い顔を見せてしまってごめんね。こんなおっぱいでもたくさん吸ってくれてありがとうね。と泣きながら抱きしめました。
私もそれから育児が楽しい、幸せと思う時間が増えました。
おっぱいをあげる行為が幸せすぎたせいで、こだわりすぎてしまった母乳育児。
お母さん達を傷つけないように、また母乳育児を出来る可能性があるからお医者さんは大丈夫といってくれます。
育児書やネット情報などにも必ずしも母乳不足ではないというような励ます書き方がされているかもしれません。
でもそんな情報だけを鵜呑みにして母乳育児を続けるのではなく、自分の子を見てどちらの育児方法の方が子が笑顔でいられるか、健康に大きくなれるかを考えなければいけなかったと思いました。
娘にとって母乳が足りなくてイライラしているお母さんではなく、ずっとニコニコでいられるお母さんでありたいなと思いました。
離乳食が3回食まで進んだ今、娘はもうおっぱいを見せてもくわえようとはしません。
娘はおっぱいをあげていたあの時間のことを覚えていないかもしれません。
だけど、私はこれからもおっぱいをあげられたあの幸せだった時間をずっと大切に忘れないでいたいです。
ゼクシィBaby WEB MAGAZINEの記事
著者:タチマチ
もうすぐ1歳になる娘と夫と3人暮らしの新米母です。
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