産後の入院期間は、はじめてのお世話を身につける不眠不休の合宿のようなものでした。
事前の知識だけではとうてい太刀打ちできず、なかでも授乳が全然うまくいきませんでした。
出産した当日、助産師さんに教わってさっそく授乳をしてみることに。
まだふにゃふにゃで触るのもこわいようなわが子を、おそるおそる胸に抱き寄せます。
けれどわが子は全然くわえてくれないし、助産師さんに見てもらうとわたしの母乳もほとんど出ていないようでした。
なんとか授乳の格好だけはしてみた、という感じで、はじめての授乳(飲んでいないけど)は終了。
体中に力が入り不自然な姿勢を続けたからか、ぐったりと疲れてしまいました。
その日は何度か挑戦するもうまくいかず、助産師さんが「無理せずにミルクを足してあげましょう」と言ってくれました。
小さな小さなカップで口にミルクを注ぐと、ちゃんと飲めている様子。
ほっとしたのと同時に、次は母乳を飲んでもらえたらいいなあと小さな期待を抱きました。
2日目には助産師さんの母乳マッサージのおかげもあり、ほんの少し初乳が出るようになりました。
でも、わが子はまだコツがつかめないのか、うまく飲めていないようでした。
「大切な成分が入っていると言われる初乳は、できれば飲んでほしいね」と言われ、手で搾乳してカップから口に注ぐことになりました。
直接の授乳はなかなかうまくいかないまま2日目が終わろうとしていました。
その次の日、出産を終えたママさんが隣のベッドにやってきました。
出産からたった3日しかたっていないのに、色々な説明を受ける隣のママさんの様子が懐かしく思えました。
しばらくすると、カーテンの向こうから「ちゅっちゅっちゅっちゅっ」というおっぱいを飲む音が聞こえてきました。
わたしはまた授乳がうまくいかず、搾乳をしているところでした。
「隣のママさんは、今日出産したのにもう上手に授乳してるんだ」
そう思うと、必死にがんばってきた気持ちがあふれ出し、急に悲しくてしかたがなくなりました。
あと2日で退院なのに授乳がうまくいかない焦りもあり、ちゅっちゅっという音を聞きながら涙が出そうになりました。
すると隣のベッドに助産師さんがやってきました。
「ちゅっちゅっと音が出ているのは、うまく吸えていない証拠だよ。飲めているときは音がしないの。もう一度一緒にやってみましょう」
そうだったのか。
勝手に焦って勝手に悲しくなっていたけど、隣のママさんもわたしも、まだまだ子育て始まったばかり。
みんな同じように一生懸命なんだ、比べたって仕方がない、と思ったできごとでした。
ゼクシィBaby WEB MAGAZINEの記事
著者:かめかあさん
年齢:30代
子どもの年齢:1歳
2019年8月に男の子(ごんさん)を出産しました。結婚10年目ののんびり夫婦+7歳のリクガメ+新入りごんさんで楽しく暮らしています。妊娠中からインスタグラムで絵日記を描いています。
インスタグラム:@kamekaasan
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