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【医師監修】授乳中に妊娠したらおっぱいはやめるべき?それともOK?専門家に聞いてみました

白目みさえさんは、長女が7カ月の時に、次女の妊娠が判明。

妊娠自体はとてもうれしかったそうですが、長女の出産でお世話になった産院の助産師さんから気になることを言われたそうです。それが「妊娠したのなら授乳はやめてね」という言葉。

 

どうしようか迷った末におっぱいをやめることを決意した白目さん。ただ、ばたばたとおっぱいをやめたので、想定外のトラブルに見舞われ、大変だったそうです。

 

白目みさえさんの体験記:第二子を妊娠し生後半年で卒乳⁉ 気合を入れて卒乳をスタートしたのに、あれ? by 白目みさえ

 

そこで、妊娠したら授乳をやめたほうがいいのか、また白目さんのように急に断乳することになった場合の注意点などを、産婦人科医として多くの妊婦さんや新米ママの診察を行い、悩みについてのアドバイスを行っている東峯ラウンジクリニックの院長、松峯美貴先生に教えてもらいました。

 

Q:体験談の助産師さんが「妊娠したら授乳はやめてね」といったのは、どんな理由からでしょうか。

A:おっぱいを吸われる(吸てつ)されることで、子宮収縮を促すホルモンが分泌され、流早産のリスクが高まるからだと考えられます。

赤ちゃんがおっぱいを飲むためにママの乳首を吸うと、母乳の分泌を促す「プロラクチン」と、母乳を外へ出そうとする「オキシトシン」という2つのホルモンが、ママの脳下垂体から出るようになっています。そのうちオキシトシンには、お産で大きくなった子宮を収縮させて元に戻そうという働きもあります。

2人目を妊娠してもママのおっぱいから母乳を飲ませ続けていると、オキシトシンは分泌が持続し、子宮が収縮する頻度が増すため、流早産のリスクが高くなります。

このような理由から体験談の助産師さんは、授乳をやめるように言ったと考えられます。

 

Q:上記のQ&Aから考えると妊娠中の授乳はやめた方がいいのでしょうか。

A:流早産の問題のほかに栄養不足の心配もあるので、完全母乳はやめて「だんだん卒乳」をしましょう。

実際に妊娠中の授乳がどのような影響を与えるのでしょうか。海外には妊娠中の授乳に関連する研究データがいくつかあります。

2017年に海外で発表されたデータだと妊娠中に授乳をしているママと授乳をしていないママとを比較した場合、流早産の起こる割合はどちらも差がないとしています。その後2019年にアメリカで行われた研究によると、妊娠中に母乳をあげていたママの流早産率は約4倍という結果に。ただし寝る時だけおっぱいを飲ませているママであれば、授乳していないママと大差がないとも書かれています。

つまり、2人目妊娠中の授乳については賛否両論あるのが現状です。

そこで私は、母乳育児中に妊娠したママたちには「だんだん卒乳」をするようにお話しています。なぜなら子宮収縮のほかに、母乳を飲ませることで、ママはかなりの栄養を吸い取られることになるため、ママが貧血気味になったり、栄養不足に陥る可能性があるからです。

そうはいってもスパッと母乳をやめるのは母子ともに難しい場合もあるでしょう。まずは完全母乳から混合栄養に切り替えていきましょう。

 

 

Q:卒乳を行う際の子どもへの注意点や上手にすすめるコツをお教えください。

A:卒乳を成功させるにはママが気持ちを固めることが大切。

卒乳を成功させるコツは、ママが「おっぱいをやめさせる!」と、しっかりと意志を持つことです。卒乳させようと決めたのに「泣いてばかりで可愛そうだから」と、おっぱいをあげてしまうとふりだしに戻ってしまいます。ここは気持ちを決めて卒乳にのぞむようにしましょう。

今まで完全母乳だった場合は、昼間だけミルクにしてみる→朝と昼間はミルクにしてみるなど、「だんだん卒乳」をしていくのがいいでしょう。

さらに周囲の協力も必要です。ママが抱っこをするだけでおっぱいを思い出して泣く場合は、パパに抱っこしてもらう、パパに哺乳ビンでミルクを飲ませてもらうようにするといいでしょう。

夜、おっぱいがないと寝られない子の場合は、昼間、くたくたになるまで遊ばせてみてください。疲れてすんなり寝てくれるようになることも。でもママが妊娠中にくたくたになるまで動くとおなかが張ってしまうので、これもパパや周囲の人に協力してもらってください。

体験者の白目さんのお子さんのように、すでに離乳食が始まっている場合は、「おっぱいよりもおいしいものがこの世の中にある」とわかり始めてきているので、わりとあっさりと卒乳できるケースも多いです。

 

 

 

Q:白目さんは卒乳する際に乳腺炎になったそうですが、このようなトラブルを防ぐにはどうしたらいいでしょうか。

A:できればおっぱいの専門家の手を借りて卒乳するのがいいでしょう。

白目さんの場合、母乳を飲ませる量が減ったのに、今までと同じ量の乳汁が分泌されつづけたことで、乳腺で炎症が起きてしまい、乳腺炎になってしまったと考えられます。こういったトラブルを防ぐには、たまったおっぱいを搾乳して外へ出しながら、少しずつ乳汁の分泌をおさえていくことが大切です。

搾乳する際は、乳首はさわらず、両手で乳房の根元を持つようにします。そしておにぎりをにぎるようにしぼる「おにぎりしぼり」で、少しずつ分泌をおさえることができます。また、おっぱいがパンパンにはって熱を持っている時は、保冷剤などで冷やすのもいいでしょう。

自分だけでスムーズに卒乳するのが難しいこともあります。おっぱいケアに精通している助産師さんや、母乳外来のある医療施設のサポートを受けると、上手に卒乳することができますよ。

また、卒乳が完了したら一度、乳がん検診を受けましょう。乳がんは35~40歳代が発症のピークです。子育て中はどうしても子ども優先で自分のことは後回しになるママも多いでしょう。ママの健康=家族の健康です。毎日子育てで忙しいとは思いますが、受診するように心がけてくださいね。

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松峯 美貴先生

2001年東邦大学医学部卒業。東京女子医科大学院博士課程終了。その後、東峯婦人クリニックに勤務。2021年東峯ラウンジクリニック院長に就任。なかなか相談しづらいデリケートな悩みについて相談やアドバイスを行っている。あわせて産前産後ケア施設東峯サライの副センター長として、おっぱいトラブルに悩むママの診察なども担当。日本産科婦人科学会認定 産婦人科専門医。母体保護法指定医。

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